UPDATE分配・元本トラッカーを公開しました(令和7年度税制改正対応)詳しく →
JAPAN-ST.jp不動産ST・デジタル証券の記録機関
MARKET
公募ST累計(2025年度末)3,333億円▲1,650ST市場残高(推計)1兆531億円▲81%START時価総額(2026-03)336億円収録銘柄77収録発行額(判明分)3,235億円募集中7START上場7銘柄
▲赤=増加/出所: 業界公表値・当サイト集計
実務者向け
実務者向け

匿名組合型(GK-TK)の会計・税務——出資は営業者の財産になり、損益は「計算期間の末日」で立つ

2026-08-03 / 読了 16

GK-TK型の不動産STは、受益証券発行信託型とは会計も税務も別の建て付けで動く。投資家が出した金は営業者の財産になり、損益は入金の有無と関係なく計算期間の末日で立ち、分配には20.42%の源泉徴収がかかる。商法・所得税法・租税特別措置法の条文と、実際に公開されている発行届出目論見書の記載で、どこに何が書いてあるかを引き直す。

まず前提——匿名組合は「組織」ではなく「契約」である

GK-TK(ジーケー・ティーケー)とは、合同会社(GK)を営業者とする匿名組合(TK)出資を使った証券化の型を指す業界用語である。不動産証券化では長く使われてきた定番の器で、その匿名組合出資持分をブロックチェーン上でトークン化したものが、GK-TK型の不動産ST(セキュリティトークン)にあたる。

会計と税務の話に入る前に、匿名組合が何であるかを条文で押さえておきたい。株式会社や信託と違い、匿名組合には器としての実体がない。商法(明治32年法律第48号)第535条は「匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」と定める。法人格も、登記も、財産の名義もない。あるのは契約だけである。

その帰結が第536条に並ぶ。「匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する」(第1項)、「匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる」(第2項)、「匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない」(第3項)、「匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない」(第4項)。出した金は自分の資産ではなくなり、経営には関与できず、外部に対しても顔を出さない。「匿名」の意味はここにある。

投資家が数字にたどり着く経路も条文に書かれている。第539条第1項は、匿名組合員が営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、営業者の貸借対照表の閲覧又は謄写を請求し、又は営業者の業務及び財産の状況を検査することができると定める(貸借対照表が電磁的記録の場合は同項第2号)。加えて第2項は、重要な事由があるときは、いつでも裁判所の許可を得て検査できるとする。逆に言えば、契約と金商法の開示で上乗せしない限り、投資家に保証されているのはこれだけである。

利益の配当には歯止めがある。第538条は「出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない」。終了時の扱いは第542条で、「匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる」。終了事由は第540条(存続期間を定めなかった場合等の解除、やむを得ない事由による解除)と第541条(事業の成功又はその成功の不能、営業者の死亡又は後見開始の審判、営業者又は匿名組合員の破産手続開始の決定)に列挙されている。

この匿名組合出資持分は、金商法第2条第2項の権利(いわゆる第二項有価証券)である。それを「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値」に表示すると、金商法第2条第3項が定義する電子記録移転権利となり、募集規制の場面では第一項有価証券として扱われる。同項は「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く」とも書いており、この除外に当たるものが実務で言う適用除外電子記録移転権利である。当サイトが2026年8月3日現在で収録している不動産ST 77銘柄のうち、匿名組合型は17銘柄(電子記録移転権利16、適用除外電子記録移転権利1)で、公募が7、私募が10である。器の選び方そのものは別稿『不動産STOのスキーム比較』で扱ったので、本稿は会計と税務に絞る。

全体像——お金・帳簿・課税が分かれる3つの層

細部に入る前に、GK-TK型で何がどこに乗っているかを通しで見ておきたい。層は3つある。①出資する匿名組合員、②財産と帳簿が集まる営業者GK、③その下にぶら下がる不動産(実務では信託受益権の形をとることが多い)である。

受益証券発行信託型との違いは、①と②の間にある。受益証券発行信託型では投資家が持つのは「受益証券」という有価証券そのもので、受益権原簿と信託法が背後に立つ。GK-TK型で投資家が持つのは「匿名組合契約上の地位」であり、財産の名義は営業者にある。だから会社法の決算公告も、信託法の受益権原簿も、この構造には効かない。

本稿が条文の裏づけとして引くのは、商法(明治32年法律第48号)、会社法(平成17年法律第86号)、所得税法(昭和40年法律第33号)、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号。以下「復興財確法」)、法人税基本通達、所得税基本通達、消費税法基本通達である。会計基準は企業会計基準委員会の移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(2025年3月)と実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(2022年8月26日)を引く。

実務の記載は、実際に公開されている発行届出目論見書——デジタル証券「renga」第1号 〜レジデンス(北品川)〜(renga第1号合同会社、有価証券届出書2025年9月12日提出・2025年9月28日効力発生。以下「renga第1号の目論見書」)——による。同ファンドは営業者を renga第1号合同会社、資産運用会社をデジタル証券株式会社、信託受託者を三菱UFJ信託銀行株式会社とし、1口10万円・14,250口・14億2,500万円を個人投資家向けに募集した公募案件である。以下で引く条件・日付は、いずれもこの目論見書の日付現在のものであって、他のGK-TK案件に一般化できるものではない。

層1|投資家
匿名組合員(出資する人)
  • 匿名組合契約は「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」(商法第535条)
  • 出した金は自分の資産ではなくなる——「匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する」(第536条第1項)
  • 経営には入れない——「営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない」(同条第3項)、「営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない」(同条第4項)
  • 見られるのは営業者の貸借対照表だけ——営業年度の終了時に閲覧・謄写を請求でき、業務及び財産の状況を検査できる(第539条第1項)
層2|営業者
営業者GK(合同会社)——ここに財産と帳簿が集まる
  • 会社としての会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」(会社法第614条)。各事業年度に係る計算書類を作り、10年間保存する(第617条第2項・第4項)
  • 決算公告の義務はない——公告を求める会社法第440条は「株式会社は」で始まり、持分会社には及ばない
  • 消費税は営業者が単独で負う——「匿名組合の事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、商法第535条に規定する営業者が単独で行ったことになる」(消費税法基本通達1-3-2)
  • 匿名組合員に分配すべき利益の額は、営業者側で損金(個人なら必要経費)に落ちる(法人税基本通達14-1-3、所得税基本通達36・37共-21の2)
層3|資産
不動産管理処分信託の受益権/不動産
  • renga第1号の例では、営業者が取得するのは三菱UFJ信託銀行を受託者とする不動産管理処分信託の信託受益権のみ(発行届出目論見書「投資制限」)
  • この層の損益が層2に上がり、層2で匿名組合員の持分に割り振られ、層1で課税される
受益証券発行信託型との一番の違いは、投資家が持つのが「証券」ではなく「契約上の地位」だという点にある。だから会社法の公告も、信託法の受益権原簿も効かず、投資家が数字にたどり着く経路は商法第539条の閲覧・検査権と、金商法の開示(有価証券報告書・半期報告書)に限られる。
図: GK-TK型(匿名組合型)で、お金・帳簿・課税がどこで分かれるかを上から下へ読む。「営業者」とは匿名組合の事業を自分の名前で行う者のことで、不動産STではSPCとして新設された合同会社(GK)がこれにあたる。「匿名」の意味は、投資家の名が外に出ないという点にある——出資した財産は営業者のものになり、取引の相手方に対して権利義務を負うのも営業者だけである。条文は商法・会社法・消費税法基本通達ほか、実例は本文の出所欄の発行届出目論見書による。

会計——出資者側には定めがあり、営業者側には定めがない

GK-TK型の会計で最初に知っておくべきなのは、出資者側と営業者側で、拠って立つものの厚みがまるで違うということである。

出資者側には基準がある。移管指針第9号(金融商品会計に関する実務指針)第132項は、「任意組合すなわち民法上の組合、匿名組合、パートナーシップ、及びリミテッド・パートナーシップ等(以下「組合等」という。)への出資については、原則として、組合等の財産の持分相当額を出資金(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるものについては有価証券)として計上し、組合等の営業により獲得した純損益の持分相当額を当期の純損益として計上する」と定める。ただし書として「任意組合、パートナーシップに関し有限責任の特約がある場合にはその範囲で純損益を認識する」ともある。純額で持ち込むのが原則、というのが出発点だ。

結論の背景にあたる第308項は、実務の幅も認めている。任意組合やパートナーシップについては組合財産のうち持分割合に相当する部分を出資者の資産・負債として計上する実務(いわゆる総額法)もあるが、「多くの場合には、匿名組合、リミテッド・パートナーシップと同様に貸借対照表及び損益計算書双方について持分相当額を純額で取り込む方法が適切と考えられることから、その方法を原則とした」とする。そのうえで「匿名組合及びリミテッド・パートナーシップについては、それらが実質的に匿名組合出資者等の計算で営業されている場合もあり得るため、貸借対照表及び損益計算書双方について持分相当額を純額で取り込む方法が妥当でないことも想定される」と留保し、最後は「その契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理及び表示を選択することとなる」と結ぶ。つまり原則は純額法だが、案件の実態しだいで動くということである。

対して営業者側には、会計基準の定めがない。ここははっきり書かれている。実務対応報告第43号は、電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有が「株式会社以外の信託、合名会社、合資会社、合同会社…民法上の任意組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合(以下合わせて「会社に準ずる事業体等」という。)によって行われることも考えられる」としたうえで、その会計処理は「①関係法令又は実務によっており、会計基準上、必ずしも明らかではないため、これを明らかにすることは本プロジェクトの範囲を超えて基準開発を行うこととなること、②当委員会では、基本的に株式会社における処理を明らかにしてきており、会社に準ずる事業体等の会計処理に関する定めは限定的であることから、本実務対応報告においては、株式会社による発行及び保有の会計処理のみを対象としている」と述べる。GK-TK型のSTは、まさにこの「会社に準ずる事業体等」による発行である。ST固有の会計上の取扱いを定めた唯一の実務対応報告が、その発行体側を範囲から外している——これがGK-TK型の会計を語るときの出発点になる。

では営業者GKは何に従うのか。合同会社は持分会社なので、会社法第614条「持分会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」が入口になる。作成義務は第617条で、成立の日における貸借対照表(第1項)と各事業年度に係る計算書類(第2項)を作り、作成した時から10年間保存する(第4項)。ここで重要なのは、公告の規定が無いことである。計算書類の公告を求める会社法第440条第1項は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない」と、主語を株式会社に限っている。持分会社である営業者GKに決算公告の義務はない。外から数字を見る手段は、商法第539条の閲覧・検査権か、金商法の開示に限られることになる。

空白は契約で埋められている。renga第1号の目論見書は「資産の評価」の項で、1口当たり純資産額を「出資金総額に当期損益の累計額を加えた金額(純資産額)を総出資口数で除して計算されます」としたうえで、「当期損益は、日本における一般に公正妥当な会計慣行に従って計算されますが、財務会計上一般に公正妥当と認められる会計原則が税法に定められる会計処理の方法と相違する場合においては、税法に定められる会計基準に従って計算されます」と定める。会計基準が税法に道を譲ることを、契約で先に宣言している。また「発行者は、本匿名組合の事業に関するあらゆる取引について、明瞭かつ正確な会計帳簿その他会計に関する記録を作成し、保管します」との定めと、金商法に基づき有価証券報告書・半期報告書・臨時報告書を関東財務局長に提出した場合は匿名組合員に遅滞なく通知する旨の定めが置かれている。公募のGK-TK型STでは、金商法の継続開示が投資家にとって実質的な数字の入手経路になる。

なお、上場会社が投資家としてGK-TK型STを保有する場合は話が別で、実務対応報告第43号の対象になる。同報告は、電子記録移転有価証券表示権利等の権利の内容は従来のみなし有価証券と同一と考えられるとして、貸借対照表価額の算定と評価差額の処理は従来どおり金融商品会計基準・金融商品実務指針に従うとしつつ、発生及び消滅の認識だけは別の定めを置いた。約定日及び受渡日が明確でない場合が生じ得ることを理由に、「その売買契約について、契約を締結した時点から電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点までの期間が短期間である場合に限り、契約を締結した時点において認識することとしている」というのがその内容である。適用は2023年4月1日以後開始する事業年度の期首からとされている。

税務①——損益は「現実に分配を受けていなくても」立つ

GK-TK型の税務で最も実務に効くのが、損益の帰属時期である。根拠は法人税基本通達14-1-3(匿名組合契約に係る損益)で、条文は短いが両側を一度に定めている。

「法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する。」

前半が投資家側、後半が営業者側である。投資家側の基準日は入金日ではなく計算期間の末日。営業者側は、匿名組合員に分配すべき利益の額を損金に落とす。この後半があるおかげで、営業者GKの課税所得はほぼ残らず、事業の利益は投資家段階でだけ課税される。GK-TKが「導管性がある」と言われるのは、法人格を持つ合同会社を使いながらこの通達によって二重課税が避けられているからで、信託の受益者等課税とは仕組みが違う。

個人の側は所得税基本通達36・37共-21が受け持つ。本文は「匿名組合員が当該匿名組合契約に基づく営業者から受ける利益の分配は雑所得とする」。ただし書は「匿名組合員が当該匿名組合契約に基づいて営業者の営む事業…に係る重要な業務執行の決定を行っているなど組合事業を営業者と共に経営していると認められる場合には、当該匿名組合員が当該営業者から受ける利益の分配は、当該営業者の営業の内容に従い、事業所得又はその他の各種所得とする」。そして36・37共-21の2が営業者側を定める——「営業者が匿名組合員に分配する利益の額は、当該営業者の当該組合事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する」。法人税側の通達と同じ構造が、所得税側にも置かれている。

実務でつまずきやすいのが、計算期間と事業年度の食い違いである。renga第1号の目論見書は、計算期間を「毎年5月1日から10月末日まで、及び11月1日から翌年4月末日までの各6か月間」(初回のみ2025年12月18日から2026年4月末日まで)と定める一方、本匿名組合の事業年度を「初年度は2025年12月18日から2026年4月30日まで。次年度以降は毎年5月1日から翌年4月末日まで」と定めている。1事業年度の中に計算期間が2本入る設計だ。通達が基準に置くのは事業年度ではなく計算期間の末日なので、投資家側の取込みは年2回に分かれる。案件ごとにこの2つを取り違えないよう、社内の管理表では別の欄に置きたい。

そして、分配がない期でも損益は立つ。通達がわざわざ「現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても」と書いているのは、この点を外すなということである。renga第1号の目論見書も、分配について「発行者は、本匿名組合に係る事業の費用若しくは支出、又は他の義務若しくは債務に充当し又は備えるため、利用可能な金額から一定の金額を留保する完全な裁量(当該裁量は合理的に行使されます。)を有します」と定めており、利益が出ても留保されうる。個人投資家向けの記載はさらに直截で、利益の分配が「当該利益が匿名組合に留保することとした場合の当該留保額を含みます」と括弧書きされている。

① 計算期間の末日損益が確定する日
法人税基本通達14-1-3は、「現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し」と定める。入金日ではなく、計算期間の末日が基準である。renga第1号の計算期間は毎年5月1日〜10月末日と11月1日〜翌年4月末日の各6か月(初回のみ2025年12月18日〜2026年4月末日)と目論見書に定められている。
② 匿名組合の事業年度計算期間と一致しないことがある
同じ目論見書は、本匿名組合の事業年度を「初年度は2025年12月18日から2026年4月30日まで。次年度以降は毎年5月1日から翌年4月末日まで」とする。つまり1事業年度の中に計算期間が2本入る。通達が基準に置くのは事業年度ではなく計算期間の末日なので、法人投資家の取込み時期は年2回に分かれる。
③ 出資者側の帳簿原則は「純額で持分相当額」
移管指針第9号(金融商品会計に関する実務指針)第132項は、任意組合・匿名組合・パートナーシップ等への出資について「原則として、組合等の財産の持分相当額を出資金(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるものについては有価証券)として計上し、組合等の営業により獲得した純損益の持分相当額を当期の純損益として計上する」と定める。第308項は、実務には総額で取り込む方法もあるとしたうえで、「その契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理及び表示を選択することとなる」と結ぶ。
④ 分配日計算期間末から3か月以内(renga第1号の例)
目論見書の分配方針は「計算期間の末日から3か月以内に、発行者が合理的に判断した利用可能な現金を、出資割合に応じて分配します」。損益が立つ日(①)と現金が動く日はずれる。①で益金・損金に算入し、④で源泉徴収が発生する——この2つを別の欄で管理する。
⑤ 源泉徴収の納付徴収の日の属する月の翌月10日まで
所得税法第210条は、匿名組合契約に基づく利益の分配を支払う者に対し、「その支払の際、その利益の分配について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない」と定める。分配の実行日が月をまたぐと納付期限も1か月ずれる。
⑥ 支払調書翌年1月31日
「匿名組合契約等の利益の分配の支払調書(同合計表)」の提出義務者は利益の分配をする者、提出時期は翌年1月31日(国税庁の手続案内F1-15。2026年8月3日確認)。同案内は「令和8年8月に税務署提出用の法定調書の書面様式が変わります。令和8年8月以降に書面で税務署に提出する際は、変更後の様式をご使用ください」と注意書きを置いている。
図: 匿名組合の損益と現金が動く順番。「計算期間」とは、匿名組合の損益を締めて分配額を決める区切りのことで、営業者の事業年度とも投資家の事業年度とも別に契約で定められる。①②③が「帳簿にいつ立つか」、④⑤⑥が「現金と税金がいつ動くか」——ここを分けて管理しないと、分配のない期に益金だけが立つ状況を取りこぼす。条文・基準は法人税基本通達・移管指針第9号・所得税法・国税庁手続案内、実例は本文の出所欄の発行届出目論見書による。

税務②——20.42%はどこに、どの条文でかかるか

GK-TK型でよく引かれる「源泉20.42%」は、相手が誰かによって根拠条文が3本に分かれる。まとめて覚えるより、支払先の属性ごとに条文を持っておくほうが実務では速い。

居住者向けが本則である。所得税法第210条(源泉徴収義務)は「居住者に対し国内において匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)に基づく利益の分配につき支払をする者は、その支払の際、その利益の分配について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない」と定め、第211条(徴収税額)が「利益の分配の額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額」とする。

内国法人向けは、課税標準の側から入る。第174条(内国法人に係る所得税の課税標準)は第9号に「匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。…)に基づく利益の分配」を挙げ、第212条第3項がその支払者に源泉徴収義務を課し、第213条第2項第2号が「配当等又は利益の分配」について百分の二十の税率を定める。

非居住者・外国法人向けは、国内源泉所得の枠組みに乗る。第161条第1項第16号は「国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)に基づいて受ける利益の分配」を国内源泉所得として掲げ、第212条第1項がその支払者に源泉徴収を求め、第213条第1項第1号が百分の二十の税率を定める。租税条約による軽減の可否は相手国ごとに別途確認することになる。

この20%に復興特別所得税が上乗せされる。復興財確法第28条第1項は、所得税法第四編第1章から第6章までの規定により所得税を徴収して納付すべき者は、その徴収(平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に行うべきものに限る)の際、復興特別所得税を併せて徴収し、当該所得税の法定納期限までに併せて国に納付しなければならないと定め、第2項が税率を「百分の二・一」とする。第210条は第四編の中にあるので、20%×1.021=20.42%となる。renga第1号の目論見書も個人・法人のいずれについても「利益分配の支払額について20.42%(2013年1月1日から、所得税20%に対して2.1%の復興特別所得税が付加)の税率で計算された金額を源泉徴収いたします」と書いている。

実務で取り過ぎが起きやすいのが、送金額の全部に20.42%を掛けてしまうケースである。所得税基本通達36・37共-21の注1は、利益の分配を「匿名組合員が当該営業者から支払を受けるものをいう(出資の払戻しとして支払を受けるものを除く。)」と定義する。元本の返還部分は対象外だ。renga第1号の分配方針もそこを書き分けている——「本匿名組合員に対する分配は、本匿名組合員に割り当てられる利益の金額の範囲内では利益の分配とし、分配の残りの部分は元本の返還とします」。分配の実行前に、利益部分と元本返還部分の内訳を確定させる工程が要る。

法定調書も忘れやすい。「匿名組合契約等の利益の分配の支払調書(同合計表)」の提出義務者は利益の分配をする者、提出時期は翌年1月31日である(所得税法第225条第1項が第210条に規定する利益の分配の支払者を掲げ、国税庁の手続案内F1-15が提出時期を示す。2026年8月3日確認)。同案内には「令和8年8月に税務署提出用の法定調書の書面様式が変わります。令和8年8月以降に書面で税務署に提出する際は、変更後の様式をご使用ください」という注意書きが付されている。本稿の公開日は令和8年8月3日なので、書面提出を予定している案件は様式を確認しておきたい。

最後に、法人投資家が取り違えやすい点をひとつ。renga第1号の目論見書は「匿名組合の利益の分配は課税所得を計算する際、受取配当等の益金不算入の適用対象とはなりません」と明記する。名前は「分配」でも配当ではないので、全額が益金に入る。一方で「源泉徴収された税額については、その内国法人が法人税の確定申告をする際に税額控除の適用を受けることができます」とも書かれている。

税務③——損失はどこで止まるか

利益より読み違えが多いのが損失側である。ここは法人と個人で、止まり方がまったく違う。

法人には租税特別措置法第67条の12(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)が効く。同条第3項第1号は「組合契約」を、民法第667条第1項の組合契約・投資事業有限責任組合契約・外国におけるこれらに類する契約「並びに匿名組合契約等」と定義し、第2号で「匿名組合契約等」を匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)及び外国におけるこれに類する契約と定める。任意組合の話だと思って読み飛ばすと、匿名組合が入っていることを見落とす。

効き方はこうだ。法人が特定組合員に該当し、かつ「その組合契約に係る組合事業…につきその債務を弁済する責任の限度が実質的に組合財産(匿名組合契約等にあつては、組合事業に係る財産)…の価額とされている場合その他の政令で定める場合」には、当該事業年度の組合等損失額のうち「当該法人の当該組合事業に係る出資の価額…を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額」(組合等損失超過額)は損金の額に算入されない(第1項)。特定組合員とは、組合事業に係る重要な財産の処分・譲受け又は多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員以外の者をいう(同項括弧書)。匿名組合員は業務執行も代表もできず、第三者に対して権利義務を有しない(商法第536条第3項・第4項)から、通常の投資家はこれに当たることになる。

ただし切り捨てではない。第2項は、組合等損失超過合計額を有する法人について、当該事業年度のその組合事業による利益の額として政令で定める金額に達するまでの金額を損金の額に算入すると定める。将来その組合事業が利益を出せば取り戻せる、という繰越の仕組みだ。renga第1号の目論見書もこの規律を投資家向けに書き下している——「法人組合員(組合に係る重要な業務の執行の決定に関与し、契約を締結するための交渉等自らその執行を行う法人組合員は除かれます。)の組合損失について、組合債務の責任の限度が実質的に組合財産の価額とされている場合には、その法人組合員に帰属すべき組合損失のうちその法人組合員の出資の価額として計算される金額を超える部分の金額は、損金の額に算入されません」。

個人はもっと手前で止まる。匿名組合の利益の分配は原則として雑所得(所得税基本通達36・37共-21)であり、所得税法第69条第1項が損益通算の対象として挙げるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つだけで、雑所得は入っていない。他の所得と通算する道はそもそもない。なお、個人の不動産所得の損益通算を制限する租税特別措置法第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)は、第2項第1号で「組合契約」を民法第667条第1項の組合契約・投資事業有限責任組合契約・外国におけるこれらに類する契約と定義しており、匿名組合契約を含めていない。法人向けの第67条の12が匿名組合を明示的に取り込んでいるのと対照的である。

所得区分については、設計段階で見ておきたい注記がもうひとつある。所得税基本通達36・37共-21の注2は「営業者から受ける利益の分配が、当該営業の利益の有無にかかわらず一定額又は出資額に対する一定割合によるものである場合には、その分配は金銭の貸付けから生じる所得となる」と定める。固定利回りや優先劣後の設計を詰めるとき、この注2に触れる形になっていないかは条件表を作る段階で確認しておくべきである。同じく本文ただし書の「共に経営していると認められる場合」も、投資家が運用判断に関与する設計を検討するときの境界線になる。

個人投資家にとってのGK-TK型の重さは、この2点に集約される——分配は雑所得として総合課税で累進税率がかかり、損失は他の所得と通算できない。公募の受益証券発行信託型(特定受益証券発行信託)が分配金・譲渡益とも20.315%の分離課税に収まるのとは、税負担の姿がまるで違う(受益証券発行信託型の課税関係は別稿『不動産STの税金』で整理した)。renga第1号のように個人向けに公募されるGK-TK型が出てきている以上、この差は投資家への説明資料で明示しておきたいところである。renga第1号の目論見書も、譲渡について「譲渡対価としてそれに係る譲渡原価との差額が、譲渡所得に分類され他の所得と総合して課税標準を構成し、累進税率が適用され」ると書き、契約終了時の返還金については「返還金額と帳簿価額との差額は原則として雑所得に分類され、収入金額又は必要経費に算入することとなります」と書いている。

消費税と、実務家のチェックポイント

消費税は、匿名組合だけ扱いが違う。消費税法基本通達1-3-1は共同事業について「当該共同事業の構成員が、当該共同事業の持分の割合又は利益の分配割合に対応する部分につき、それぞれ資産の譲渡等又は課税仕入れ等を行ったことになる」と持分按分を定めるが、その括弧書きで「人格のない社団等又は匿名組合が行う事業を除く」と明示的に匿名組合を外している。受け皿が1-3-2で、「匿名組合の事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、商法第535条《匿名組合契約》に規定する営業者が単独で行ったことになる」。賃料収入も課税仕入れも、投資家には按分されず営業者GKに集まる。商法第536条第1項の帰結が、そのまま消費税にも表れている。

担当者が確認するのは、順番に7点である。①分配のうちどこまでが「利益の分配」か(元本返還部分に源泉徴収は及ばない)、②相手が居住者・内国法人・非居住者/外国法人のどれで根拠条文がどれか、③個人の所得区分は原則雑所得だが2つの例外がある、④法人の損失は出資の価額で止まり繰り越される、⑤個人の損失は雑所得で行き止まり、⑥受取配当等の益金不算入は使えないが源泉分は税額控除できる、⑦営業者側の会計には基準がなく契約と税法で埋めている。詳細は図に並べた。

運用に入る前に決めておきたいのは、①と⑦である。①の内訳確定は分配のたびに発生する定型作業なので、初回分配の前に計算の型と承認フローを固めておくと以後が楽になる。⑦は、会計方針を契約書のどこに、どの言葉で書くかという設計上の判断であり、あとから変えるのが難しい。renga第1号のように「会計原則が税法と相違する場合は税法による」と目論見書に書ききってしまう例が実際にあるが、これは投資家に示す1口当たり純資産額の意味を決める記載でもある。

受益証券発行信託型を担当してきた人がGK-TK型に移ると、探しても見つからない書類がいくつもある。受益権原簿がない(あるのは契約と、プラットフォーム上の保有記録である)。決算公告がない(会社法第440条は株式会社にしか及ばない)。信託計算規則も、受益証券発行信託計算規則も効かない。信託財産の財務諸表に対する監査証明という枠組みも、そのままでは当てはまらない(受益証券発行信託型の監査の輪郭は別稿『信託の計算書類とは何か』で扱った)。無いものを探して時間を使う前に、この違いを最初に共有しておきたい。

最後に注意点をひとつ。本稿で引いた条件・日付・金額は、いずれもrenga第1号の目論見書の日付現在のものであり、他のGK-TK案件に一般化できるものではない。計算期間、事業年度、分配の頻度、留保の裁量、会計方針の書きぶりは案件ごとに契約で決まる。実案件では必ずその案件の契約書と目論見書に当たっていただきたい。当サイトが収録している各銘柄のスキーム区分は銘柄一覧に、組成の座組と出所は銘柄詳細ページに記録日つきで載せている。

本稿は匿名組合型(GK-TK型)不動産STの会計・税務に関する一般的な解説であり、特定銘柄の取得・売却を勧誘するものではない。税務・会計上の取扱いは契約内容や個々の事情によって異なりうるうえ、本稿は法令・通達の条文と公開されている開示書類の記載を整理したものにとどまるため、実際の判断は税理士・公認会計士等の専門家および各証券会社にご確認いただきたい。

① 分配のうち、どこまでが「利益の分配」か元本の返還部分には源泉徴収が及ばない
所得税基本通達36・37共-21の注1は、利益の分配を「匿名組合員が当該営業者から支払を受けるものをいう(出資の払戻しとして支払を受けるものを除く。)」と定義する。renga第1号の分配方針も「本匿名組合員に割り当てられる利益の金額の範囲内では利益の分配とし、分配の残りの部分は元本の返還とします」と書き分けている。送金額の全部に20.42%を掛けると取り過ぎになる
② 相手が誰かで根拠条文が変わる居住者・内国法人・非居住者/外国法人の3本立て
居住者へは所得税法第210条・第211条(20%)。内国法人へは第212条第3項・第213条第2項第2号(20%)。非居住者・外国法人へは、匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配が国内源泉所得(第161条第1項第16号)として第212条第1項・第213条第1項第1号(20%)で捕まる。いずれも復興特別所得税2.1%が上乗せされて20.42%(復興財確法第28条第1項・第2項)。租税条約の適用可否は相手国ごとに別途確認する。
③ 個人の所得区分は原則「雑所得」ただし書と注2の2つの例外を読む
所得税基本通達36・37共-21の本文は「営業者から受ける利益の分配は雑所得とする」ただし書は、匿名組合員が重要な業務執行の決定を行っているなど営業者と共に経営していると認められる場合には営業者の営業の内容に従い事業所得その他の各種所得とする。注2は、分配が営業の利益の有無にかかわらず一定額又は出資額に対する一定割合による場合には金銭の貸付けから生じる所得になるとする。優先劣後や固定利回りの設計をするときは、注2に触れていないかを設計段階で見る。
④ 法人の損失は出資の価額で止まる措置法第67条の12は匿名組合を含む
同条第3項第1号は「組合契約」に匿名組合契約等を含めて定義する。特定組合員に当たり、かつ債務弁済責任の限度が実質的に組合財産の価額とされている場合、組合等損失額のうち出資の価額を基礎に計算した金額を超える部分(組合等損失超過額)は損金の額に算入しない(第1項)。切り捨てではなく、後の事業年度に同じ組合事業の利益が出ればその利益の額に達するまで損金算入できる(第2項)。匿名組合員は第三者に対して権利義務を負わない(商法第536条第4項)ため、この要件は構造上ほぼ常に満たされる。
⑤ 個人の損失は行き止まり雑所得の損失は他の所得と通算できない
所得税法第69条第1項が損益通算の対象として挙げるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つで、雑所得は入っていない。なお、個人の不動産所得の損益通算を制限する租税特別措置法第41条の4の2は、第2項第1号で「組合契約」を民法第667条第1項の組合契約・投資事業有限責任組合契約・外国におけるこれらに類する契約と定義しており、匿名組合契約はここに含まれない。個人の匿名組合は、そもそも雑所得の段階で止まっている
⑥ 受取配当等の益金不算入は使えない「分配」でも配当ではない
renga第1号の目論見書は「匿名組合の利益の分配は課税所得を計算する際、受取配当等の益金不算入の適用対象とはなりません」と明記する。一方、源泉徴収された税額は法人税の確定申告で税額控除の適用を受けることができるとも書かれている。取り込むのは全額、取り戻すのは源泉分だけ、という整理になる。
⑦ 営業者側の会計に「基準」はない会計基準の空白を、契約と税法で埋めている
実務対応報告第43号は、電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有が信託・持分会社・任意組合・商法上の匿名組合など「会社に準ずる事業体等」によって行われることも考えられるとしつつ、これらの会計処理は「関係法令又は実務によっており、会計基準上、必ずしも明らかではない」ため、株式会社による発行及び保有の会計処理のみを対象とすると述べる。実務は契約で埋める——renga第1号の目論見書は、当期損益は一般に公正妥当な会計慣行に従って計算するが、「財務会計上一般に公正妥当と認められる会計原則が税法に定められる会計処理の方法と相違する場合においては、税法に定められる会計基準に従って計算されます」と定めている。
図: GK-TK型の会計・税務で担当者が確認する項目。①②は支払のたびに毎回効く源泉徴収の実務、③④⑤は投資家に説明する所得区分と損失の扱い、⑥⑦は設計段階で決着させておく論点——この順で潰す。「特定組合員」とは、組合事業の重要な業務執行の決定に関与し、かつ契約交渉などの重要部分を自ら執行する組合員以外の者を指す(措置法第67条の12第1項)。条文・通達は商法・所得税法・租税特別措置法・所得税基本通達・実務対応報告第43号、実例は本文の出所欄の発行届出目論見書による。税務の個別判断は税理士等の専門家に確認されたい。
SOURCES / 出所

本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

MORE

関連記事