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DSCR・LTVはいつ測るのか——不動産STのコベナンツを「判定日・対象期間・提出期限」で読む

2026-07-18 / 読了 10

DSCRは毎月、LTVは年1回——そんな覚え方ではローン契約を読めない。重要なのは、いつの数字で判定するか、どの期間を使うか、結果をいつ提出するかの三つである。コベナンツを運用カレンダーに落とす方法を整理する。

DSCRとLTVは、レンダーが見ている問いが違う

DSCRは、対象不動産が生むキャッシュフローで元利金を支払えるかという返済余力を見る指標である。LTVは、借入残高に対して担保資産の価値にどの程度の余裕があるかという担保余力を見る指標である。不動産証券化の実務では両方が信用リスクを見る代表的な指標だが、同じ『財務指標』として一つの表だけで管理すると、悪化の理由を取り違える。

ただし、DSCRの分子をNOIにするのか、一定の費用・リザーブを控除するのか、分母に元金返済を含めるのか、LTVの評価額にどの鑑定評価を使うのかは、ローン契約の定義が正本である。一般的な公式をExcelに置く前に、Definitions(定義)とFinancial Covenants(財務制限)の条項を読む。

DSCR
返済余力を見る指標
契約で定めるキャッシュフロー ÷ 契約で定める元利金返済額。どの収入・費用を入れるか、単月か直近12か月かは契約の定義が正本。
LTV
担保余力を見る指標
借入残高 ÷ 契約で定める評価額。評価額に鑑定評価・帳簿価額・別の定義を使うかは契約で異なる。
① 判定日
いつの借入残高・評価額・口座残高で測るか。
② 対象期間
DSCRなら、どの期間の収支を合計するか。判定日と同じとは限らない。
③ 提出期限
計算結果をいつ、どの証明・添付資料とともに出すか。報告頻度と判定頻度も同じとは限らない。
図の読み方: DSCR・LTVで混乱したら、数式より先に「①いつの数字か、②どの期間を使うか、③いつ提出するか」の三つに分ける。頻度を一般論で覚えるのではなく、ローン契約の定義と期限を確認する。

頻度より大事な三つの日付

第一は判定日である。月末、四半期末、計算期日、鑑定評価日など、どの時点の借入残高・現金残高・評価額を使うかを確認する。第二は対象期間で、DSCRなら単月ではなく直近数か月又は直近12か月の収支を使うことがある。第三は提出期限で、判定日から何営業日以内にレンダーへ計算書や証明書を出すかである。

この三つは一致しないことがある。例えば、月末時点の借入残高を使いながら、直近12か月の収支でDSCRを計算し、その翌月の所定日までに提出する、といった形である。『毎月DSCRを出す』というメモだけでは、どの数字を使うかが分からない。カレンダーには三つの日付を別列で持つ。

閾値を割ったら何が起きるか——直ちにデフォルトとは限らない

コベナンツを割ったときの効果も契約ごとに違う。追加のリザーブ積立、キャッシュ・スイープ、投資家分配の停止、是正期間、レンダーへの通知・協議、期限の利益喪失など、段階的に定められている場合がある。公開届出書にも、財務制限への抵触等を投資家への配当停止事由とする設計例がある。

このため、計算担当が見るべきは比率そのものだけではない。閾値、測定頻度、是正方法、配当停止との関係、レンダー承諾が必要な行為を、契約の該当条文と一緒に管理する。比率が境界に近づいた段階で、AM・会計・レンダー窓口が同じ前提で対応を検討できる状態を作る。

コベナンツ管理表の最小形

管理表には、指標名、契約上の定義、閾値、判定日、対象期間、提出期限、入力元、作成者、レビュー者、根拠ファイル、判定結果、抵触時の対応を置く。DSCRとLTVを同じ列にまとめず、各々の定義・日付・入力元を分けるのがコツである。

毎月の運営実績から数値を作る作業と、レンダーへ契約どおりに提出する作業は別の仕事である。前者は月次報告、後者はコンプライアンス管理と捉える。次稿では、その計算の入口になる『各種勘定残高』を、口座とキャッシュ・ウォーターフォールから解説する。

SOURCES / 出所

本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

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