2026-07-16 / 読了 10分
不動産をトークン化する道は一つではない。国内で使われる3つの器——受益証券発行信託、GK-TK(合同会社+匿名組合)、不特法——を、投資家層・税務・二次流通・組成コストの4軸で比較する。
「スキーム」とは、商品を法律的に成立させるための器の組み方のことだ。同じ不動産を小口化する場合でも、どの法律のどの器を使うかで、売れる相手・かかる税金・売買のしやすさ・組成の手間がすべて変わる。だからスキーム選択は商品企画の最初の分岐点になる。
国内の公募不動産STの大半が採用する主流スキーム。不動産を信託する川上信託(不動産管理処分信託)と、その受益権を裏付けに受益証券を発行する川下信託(受益証券発行信託)の二層構造で、受益証券をトークン化して販売する(構造の詳細は別稿「川上信託・川下信託とは」参照)。
受益証券は第一項有価証券なので、公募して個人投資家に広く販売でき、特定口座にも受け入れられる。税務上は特定受益証券発行信託として受益者段階課税となり、公募であれば分配金・譲渡益とも金融所得課税(20.315%)の枠内に収まる。ODX『START』での二次流通に対応できるのも現状このスキームだけだ。
反面、信託銀行が二層で関与するため組成コストは相対的に重く、信託受託の審査(物件の権利関係・遵法性)も厳格になる。数十億円規模以上の優良資産で、リテール販売と二次流通まで見据える案件に向く。
不動産証券化の定番であるGK-TKスキーム(合同会社を営業者とする匿名組合出資)の持分をトークン化する型で、金商法上は「電子記録移転権利」に当たる。信託を使わないぶん組成は機動的で、借入(レバレッジ)の設計自由度も高い。
ただし個人投資家にとっては税務が重い。匿名組合分配は雑所得として総合課税(源泉20.42%)となり、金融所得課税の分離20.315%・損益通算の枠外に置かれる。このため実務では機関投資家・プロ投資家向けの私募が中心で、当サイト収録の私募銘柄にはこの型(スキーム欄「匿名組合型」等)が含まれる。リテール市場の主戦場にはなりにくいが、プロ向けの大型案件や特殊アセットでは引き続き有力な選択肢だ。
不動産特定共同事業法(不特法)に基づく任意組合・匿名組合契約の出資持分を電子化する型で、いわゆる不動産クラウドファンディング(CREAL、COZUCHI、Rimple等)の延長線上にある。根拠法が金商法ではなく不特法である点が決定的な違いで、証券会社ではなく不特法事業者が自ら販売する。
1口1万円程度からの小口化や、優待を絡めた商品設計など、リテール接点の作り方に強みがある。一方で金商法上の有価証券ではないため、証券会社の販売網・特定口座・STARTでの二次流通には乗らない。当サイトは金商法上のST(ブロックチェーン利用)を収録対象とし、不特法型クラウドファンディングは収録対象外としているが、実務では顧客層が重なるため、商品企画の際は両にらみで検討されることが多い。
①投資家層: リテール公募なら受益証券発行信託、プロ私募ならGK-TK、自社顧客への小口販売なら不特法。②税務: 個人投資家への販売を想定するなら分離課税に収まる受益証券発行信託が優位。GK-TKの雑所得総合課税は個人には不利。③二次流通: START上場まで見据えるなら受益証券発行信託一択。④組成コスト・スピード: 不特法・GK-TKが軽く、受益証券発行信託は信託銀行2層関与のぶん重い。
当サイトの収録データでは、公募64銘柄の大半が受益証券発行信託型、私募10銘柄に匿名組合型が含まれる。各銘柄のスキーム・受託者・プラットフォームは銘柄詳細ページの「組成の座組」で、市場全体の分布は市場統計ページで確認できる。
4軸の結論を一枚にまとめると次の表になる。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。