2026-07-18 / 読了 10分
レンダーから求められる『各種勘定残高』は、総勘定元帳の科目残高を並べることではない場合が多い。賃料が入る口座、元利払いに備える口座、将来支出のためのリザーブを、契約上の優先順位で確認する作業である。
会計の残高とは、貸借対照表や試算表に載る現金、未収金、未払金などの勘定科目の残高をいう。一方、レンダーが『各種勘定残高』として求めるものは、どの銀行口座にいくらの資金があり、その資金が何のために使えるかという、口座別・用途別の残高を指すことが多い。両者は関連するが、同じ一覧ではない。
不動産ノンリコースローンでは、返済原資が対象不動産のキャッシュフローと売却代金に限定される。だからレンダーは、資金がどこにあり、元利払い・税金・修繕などの必要資金を確保した後に、どれだけが自由に使えるかを見たい。口座残高は、キャッシュ・ウォーターフォールが契約どおり動いているかを確認する証拠になる。
修繕・CAPEX、税金、保険、元利払いなどに備える資金を、用途別のリザーブとして積み立てる設計がある。この資金は口座に現金として存在しても、投資家分配や任意の費用に自由に使えるとは限らない。取崩しにレンダー承諾や条件充足が必要な場合もあるため、残高の大きさだけでなく、使途制限と取崩し条件を一緒に管理する。
ここでの失敗は、総残高から『分配に使える現金』を引き算だけで決めることだ。実際には、未払費用、次回の元利払い、最低残高、リザーブ積立義務、コベナンツ上の制限を先に確認する必要がある。帳簿上の利益と、今すぐ分配できる現金が一致しないのはこのためである。
第一に、口座名義と口座の役割。第二に、期首・期末残高と主要な入出金。第三に、契約上の最低残高・必要リザーブ額。第四に、当月の元利払いと次回支払日。第五に、残高証明・銀行明細・受託者報告など、数値の根拠である。これを一枚にすれば、会計・AM・レンダー窓口が同じ資金の状態を見られる。
口座名称や資金移動の順番は案件ごとに違うため、他案件のテンプレートをそのまま流用しない。ローン契約、口座管理契約、信託契約に定める口座・資金移動・留保条件を転記し、変更があれば管理表も更新する。
月次の口座残高は、レンダーへの報告資料であると同時に、分配案を作る前提資料でもある。投資家への分配を決めるチームと、利払い・リザーブ・コベナンツを管理するチームが別々に動くと、同じ月の現金を二重に見込む事故が起きる。分配案の作成前に、ローン支払マップと月次残高表の確定版を共有する。
決算時には、これらの残高が監査済財務諸表、鑑定評価、年度予算、コベナンツ証明へ接続する。次稿では、月次運用とは別に発生する決算時のレンダー対応を、提出物の束として整理する。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。