2026-07-17 / 読了 9分
国内の不動産STはほぼ全てが「Progmat」か「ibet for Fin」のどちらかの上で動いている。当サイト収録74銘柄の実データで勢力図を確かめながら、2つの基盤の出自・技術・生態系の違いと、組成側の選定観点を整理する。
まず共通点から。両者とも、ビットコインのような誰でも参加できるパブリックチェーンではなく、許可された金融機関のみがノードを運営するコンソーシアム型(パーミッション型)のブロックチェーンだ。顧客資産の保全・権利記録の安全性・金融規制対応を優先した結果であり、国内STはこの型に収斂している。
その上で性格が分かれる。Progmatは三菱UFJ信託銀行の社内事業として生まれ、2023年10月に信託3行・SMFG・NTTデータ・SBI系・JPX系などの共同出資会社「株式会社Progmat」として中立化された、いわば信託業界発の共通インフラ。ibet for Finは野村グループのBOOSTRYが主導するコンソーシアムで、証券業界発のネットワークだ。出自の違いは、そのまま座組の重心(どの信託銀行・証券会社と組みやすいか)に表れる。
技術面では、ibet for FinがGoQuorum(エンタープライズ向けEthereum系)を採用する一方、ProgmatはかつてのCordaからAvalanche系の独自チェーン(Sovereign L1)へと基盤を刷新している。ここで実務家が押さえるべき教訓は「基盤のチェーンは入れ替わり得る」ということだ。Progmat自身が「Progmatはブロックチェーンそのものではなく、金融商品・業務システムとブロックチェーンを繋ぐアプリケーション&インフラ」と説明している通り、商品側から見た本質は台帳のブランドではなく、原簿管理・権利移転・証券会社接続の業務レイヤーにある。
またBOOSTRYはパブリックチェーン活用の考察も公表しており、将来的な相互接続・パブリック展開は両陣営とも視野に入れている。基盤選定は「今日の技術仕様」より「生態系と接続先」で考えるのが実務的だ。
当サイト収録74銘柄のプラットフォーム別内訳は、Progmatが37銘柄・判明発行額約1,858億円、ibet for Finが19銘柄・約961億円。公募の主戦場ではこの2つで金額の9割超を占める。ほかに、私募系ではOwnerShip(10銘柄・約36億円)が独自の地位を築き、Securitize、ADDX、Hash DasHの独自基盤などが少数続く——大手2強+ニッチ多様、が現在の勢力図だ。
座組との相関も明瞭で、受託者が三菱UFJ信託・みずほ信託の案件はProgmat、SMBC信託や野村證券が主幹の案件はibet for Finという組み合わせが多い(個別の座組は各銘柄ページの「組成の座組」で確認できる)。START上場7銘柄は両基盤から出ており、二次流通の対応はどちらでも実現可能である。
実務の選定は概ね次の5点に集約される。①受託者との接続: 使いたい信託銀行がどちらの基盤と業務接続済みか(事実上ここで決まる案件が多い)。②販売網: 主幹事・販売会社のシステム対応状況。③商品要件: 名義書換方式・START対応・優待連携などの機能要件。④費用: 基盤利用料の体系(公表されていないため相見積もりの世界)。⑤将来性: 追加発行・他アセット展開・ステーブルコイン決済(Progmat Coin等)との連携構想。
裏を返せば、基盤の優劣で商品リターンが変わるわけではない。投資家にとっては「どちらの基盤か」より「誰が運用し、何に投資するか」が本質であり、当サイトも基盤は座組情報の一項目として淡々と記録している。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。