投資家向け買うまでの手順——届出書に「抽選」の語は1件もない。配分と締切は証券会社の側にある
公開 2026-09-23 / 読了 16分
不動産ST(セキュリティ・トークン)を買うには、口座を開き、申し込み、代金を預け、受渡しを待つ。その一つひとつの日付と金額は、どこに書いてあるのか。本稿は、当サイトが収録している公募不動産STの有価証券届出書11本と、野村證券・大和証券・SBI証券・ALTERNA(三井物産デジタル・アセットマネジメント)の4社が公開している取引ルールを突き合わせて、①届出書が決めている日付と金額は何か ②最低いくらから買えるのか ③応募が集まりすぎたら誰が買えるのか ④お金はいつ拘束され、いつ引かれるのか ⑤買ったあといつ売れるようになるのか——を確かめる。最大の発見は、11本の届出書の全文に「抽選」という語が1件も出てこないことである。
まず用語——「申込期間」「申込証拠金」「払込期日」「受渡期日」は、全部ちがう日を指す
不動産STの買い方を調べ始めると、似た言葉がいくつも出てくる。申込期間、申込証拠金、払込期日、受渡期日、記録日。どれも「お金や権利が動く日」に見えるが、指している日はそれぞれ違う。最初にここを整理しておかないと、あとで日付が合わなくなる。
出発点は「募集」という言葉である。金融商品取引法(以下「金商法」)第2条第3項第1号は、50名以上の者に対して有価証券の取得を勧誘することを募集と定める。そして第4条第1項は、募集をするなら発行者があらかじめ内閣総理大臣(実務上は関東財務局長)に届出をしていなければならないと定める。この届出のために提出されるのが有価証券届出書であり、その第一部から第三部までがそのまま目論見書になる——この点は別稿『目論見書のどこを読むか——不動産STの目論見書は届出書そのもので、入口の値段は3つの数字を並べないと見えない』で扱った。
本稿で確認した11本の届出書は、いずれも【募集の方法】欄の冒頭に同じ一文を置いている。「本受益権については、金融商品取引法で定められる一定数(50名)以上に対する勧誘が行われるものとして、募集(金融商品取引法第2条第3項第1号)を行います」。GK-TK型の横浜伊勢佐木町だけ「募集(金融商品取引法第2条第3項)を行います」と項番号までで止めているが、趣旨は同じである。
次に日付の話に入る。届出は、出せばすぐ有効になるわけではない。金商法第8条第1項は「第5条第1項の規定による届出書を受理した日から十五日を経過した日に、その効力を生ずる」と定める。そして第15条第1項は、届出が効力を生じているのでなければ募集により取得させてはならないと定める。つまり、提出から15日という待ち時間が制度上組み込まれている。この15日がどう使われているかは、次の表で実物と突き合わせる。
50名以上に向けて「買いませんか」と声をかけること募集(ぼしゅう)
金融商品取引法第2条第3項第1号。50名以上に取得の勧誘をするなら、発行者は国(関東財務局長)に有価証券届出書を出さなければならない(第4条第1項)。「一定数(50名)以上に対する勧誘が行われるものとして」という同じ一文が、確認した11本すべての【募集の方法】欄の冒頭に置かれている(信託型10本は「第2条第3項第1号」まで、GK-TK型の横浜は「第2条第3項」と項番号までで止めている)。
買いたいと手を挙げられる期間申込期間
届出書の9【申込期間及び申込取扱場所】欄に書かれる。実物では3日間(神戸元町)から27日間(横浜)まで開きがある。同じ銘柄でも窓口ごとに期間が違うことがある——鈴鹿は東海東京証券が26日間、三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下「MDM」)が7日間だった。
申し込むときに預ける金額申込証拠金
届出書の10【申込証拠金】欄。10本が「発行価格と同一の金額」、東横INNだけ「発行価格及び申込手数料の合計額と同一の金額」で、11本とも利息はつかない。払込期日に、そのまま買付代金へ振り替えられる。つまり頭金ではなく全額の前払いである。
証券会社が発行者にお金を払い込む日払込期日
届出書の11【払込期日及び払込取扱場所】欄。投資家の入金期限ではない。野村證券は自社のルールにこう書いている——「目論見書記載の『払込期日』は、証券会社が発行企業に申込証拠金の総額を払い込む日であり、お客様のご入金最終日とは異なりますのでご注意ください」。
自分のものになる日受渡期日/記録日
届出書の14【その他】(3)欄。信託型10本はいずれも「受益権原簿への記録日は、払込期日の翌営業日」で、受渡期日も同じ日である。GK-TK型の横浜だけ受渡期日=払込期日(同日)。受益権原簿に自分の名前が載って初めて、分配金を受け取る資格が生まれる。
読む順番は①そもそも何の手続か → ②いつ手を挙げるか → ③いくら預けるか → ④誰がいつ払うか → ⑤いつ自分のものになるか。つまずきやすいのは④で、「払込期日」は投資家のカレンダーの日付ではない。投資家の入金期限は、証券会社ごとに別に決められていて、届出書には書かれていない。
図: 買うまでの手順を読むための前提用語5つ。「営業日」は証券会社の営業日を指す。条文は金融商品取引法(e-Gov法令検索・2026年9月23日確認)、欄の番号と文言はEDINET提出の有価証券届出書11件(本文の出所欄・2026年9月23日取得のPDF)、証券会社のルールは野村證券「取引ルール|セキュリティ・トークン オンラインサービス」(2026年9月23日確認)。本図は制度と開示書類の用語整理であり、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘ではない。全体像——手順は2本の線でできている。届出書の線と、証券会社の線
不動産STを買うまでの手順は、2本の線が重なってできている。片方だけを読むと、必ずどこかで話が合わなくなる。
1本目は届出書が決める線である。申込期間、申込単位、申込証拠金、払込期日、受渡期日、そして「いつ売れるようになるか」。これらは第一部【証券情報】の6から14までの欄に、確定した日付と金額で書かれている。銘柄ごとに1本あり、EDINET(金融庁の開示書類の電子開示システム)で誰でも無料で読める。口座を持っていなくても、買う気がなくても読める。
2本目は証券会社が決める線である。どの口座が必要か、申込みは何時までか、入金はいつまでか、応募が集まりすぎたら誰が買えるのか、申し込んだあとで取り消せるのか。これらは届出書に一行も書かれていない。各社が自社サイトに出している取引ルールやFAQを読むしかない。
重要なのは、1本目が銘柄ごとに1本であるのに対し、2本目は窓口ごとに1本だという点である。同じ銘柄でも、どの証券会社から買うかで最低金額も締切も配分方法も変わる。実際、品川オフィス&ホテル(S100YS50)は同じ届出書の中で、大和証券なら1口以上1口単位、MDMなら個人が10口以上10口単位・法人が1,000口以上10口単位と、3通りの申込単位を並べている。
START HERE
手順は2本の線でできている。どちらか一方だけを読むと、日付も金額も合わなくなる
- 線A=届出書が決める線。申込期間・申込証拠金・払込期日・受渡期日。全銘柄について誰でもEDINETで読める。
- 線B=証券会社が決める線。口座の種類、申込みの締切時刻、入金の期限、配分の方法、取消しの可否。届出書には書かれていない。各社が自社サイトに出している約款・取引ルール・FAQを読むしかない。
まず線Aで「この銘柄はいつ・いくら」を確かめる▼
線A|届出書(EDINETで誰でも読める)
第一部【証券情報】の6〜14——募集の方法/申込手数料/申込単位/申込期間及び申込取扱場所/申込証拠金/払込期日及び払込取扱場所/引受け等の概要/振替機関に関する事項/その他
- 発行価格と申込単位から「最低いくら要るか」が出る
- 申込期間の初日と最終日、払込期日、受渡期日が確定日付で載っている
- 「いつ売れるようになるか」も14【その他】(3)に書いてある
- ただし——誰にどう配るか、いつまでに入金するか、申込みを取り消せるかは、どの銘柄の届出書にも書かれていない
次に線Bで「自分はどの窓口から、どう申し込むか」を確かめる▼
線B|証券会社の公開ルール(各社サイト)
口座開設 → 入金 → 申込み → 配分 → 購入意思の表示 → 約定 → 受渡し
- 口座は証券総合口座だけでは足りないことがある(SBI証券は「ST取引専用口座」を別に開く)
- 申込みの締切時刻は届出書の日付より早い(野村證券は原則として申込期間最終日の17:00まで)
- 配分は先着順か抽選か、その組み合わせか——4社で言葉も実体も違う
- 申込みを取り消せるかどうかも各社で違う
線Aは銘柄ごとに1本、線Bは窓口ごとに1本である。だから同じ銘柄でも、どの証券会社から買うかで最低金額も締切も配分方法も変わる。実物では、品川オフィス&ホテルの最低申込金額が大和証券なら1万円、MDMの法人投資家なら1,000万円——同じ銘柄の中で1,000倍の開きがある。
図: 買うまでの手順を作っている2本の線。上から、2本の存在 → 線Aの中身 → 線Bの中身の順に読む。「EDINET」は金融庁の開示書類の電子開示システムで、口座がなくても無料で読める。欄の構成はEDINET提出の有価証券届出書11件、証券会社のルールは野村證券・大和証券・SBI証券・三井物産デジタル・アセットマネジメント(ALTERNA)の各社公開ページ(いずれも本文の出所欄・2026年9月23日確認)。本図は手続の地図であり、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘ではない。届出書が決める日付——11銘柄・13経路を並べる
まず1本目の線を実物で見る。2023年12月の第1号から2026年9月の直近案件まで、当サイトが収録している公募不動産STの届出書11本を並べ、提出日・申込期間・払込期日・受渡期日を取り出した。同じ銘柄でも引受人ごとに申込期間が違う場合があるので、経路の数では13本になる。
提出日に15日を足すと、金商法第8条第1項による効力発生日が出る。これを申込期間の初日と突き合わせると、市ヶ谷(2024年4月15日提出→5月1日開始)、鈴鹿の東海東京証券分(2024年10月16日提出→11月1日開始)、横浜(2026年7月16日提出→8月1日開始)、京都(2026年8月3日提出→8月19日開始)の4本が、効力発生日の翌日に申込みを始めている。制度が許す最短の日程である。いちばん余裕があるのは神戸元町で、効力発生日から13日後に申込みが始まった。
申込期間の長さは、神戸元町の3日間から横浜の27日間まで9倍の開きがある。3日間というのは、目論見書を読み、口座の有無を確かめ、入金して申し込むまでを週の途中の3日で終える必要があるということである(2023年12月18日の月曜から20日の水曜まで)。逆に27日間の横浜は、GK-TK型で販売会社が1社、インターネット完結という設計だった。
払込期日から受渡期日までは、信託型10本がそろって「翌営業日」である。届出書の14【その他】(3)は「本募集に応じて本受益権を取得する者の受益権原簿への記録日は、払込期日の翌営業日です」と書く。GK-TK型の横浜だけが受渡期日=払込期日(2026年8月28日)で同日になっている——受益権原簿ではなくブロックチェーン上の電子帳簿で管理される仕組みの違いが、ここに出ている。
なお発行価格が届出時点で「未定」だったのは11本中2本(芝公園・西麻布)だけで、いずれも仮条件1口100,000円で届け出られ、発行価格等決定日の訂正届出書(2023年12月13日・2024年5月15日)で100,000円に確定した。申込期間の初日はそれぞれ12月15日・5月16日なので、どちらも申込開始前に価格は決まっている。値決めの仕組みそのものは別稿『発行価格は10本すべて1口当たりNAV試算値を下回っていた——不動産STの値決めを、届出書の実物で追う』で扱った。
案件/窓口(書類番号)
届出書の提出日
申込期間
日数
払込期日
受渡期日
KDX ドーミーイン神戸元町(S100SB9N)
2023-11-20
2023-12-18 〜 12-20
3日
2023-12-22
2023-12-25
いちご 芝公園ほか(S100SBPF)
2023-11-20
2023-12-15 〜 12-21
7日
2023-12-22
2023-12-25
KDX名古屋栄ビル(S100SRLJ)
2024-02-09
2024-02-26 〜 03-14
18日
2024-03-18
2024-03-19
トーセイ 市ヶ谷(S100T9M6)
2024-04-15
2024-05-01 〜 05-22
22日
2024-05-24
2024-05-27
いちご 西麻布ほか(S100TAY3)
2024-04-22
2024-05-16 〜 05-22
7日
2024-05-23
2024-05-24
いちご 市谷仲之町ほか(S100UE49)
2024-09-20
2024-10-17 〜 10-23
7日
2024-10-24
2024-10-25
三井物産 イオンタウン鈴鹿/東海東京証券(S100UJK9)
2024-10-16
2024-11-01 〜 11-26
26日
2024-11-28
2024-11-29
三井物産 イオンタウン鈴鹿/MDM(同上)
同上
2024-11-20 〜 11-26
7日
2024-11-28
2024-11-29
三井物産 東横INN(S100XMTM)
2026-02-24
2026-03-19 〜 03-26
8日
2026-03-30
2026-03-31
ロードスター 横浜伊勢佐木町〈GK-TK〉(S100YR0W)
2026-07-16
2026-08-01 〜 08-27
27日
2026-08-28
2026-08-28(同日)
三井物産 品川 オフィス&ホテル/大和証券(S100YS50)
2026-07-24
2026-08-20 〜 08-27
8日
2026-08-31
2026-09-01
三井物産 品川 オフィス&ホテル/MDM(同上)
同上
2026-08-21 〜 08-27
7日
2026-08-31
2026-09-01
ウェルス シックスセンシズ京都(S100YTNX)
2026-08-03
2026-08-19 〜 08-28
10日
2026-09-01
2026-09-02
届出は受理された日から15日を経過した日に効力を生じる(金商法第8条第1項)。提出日に15日を足した日と申込初日を突き合わせると、太字の4本(市ヶ谷・鈴鹿の東海東京証券分・横浜・京都)は、効力発生日の翌日に申込みが始まっている——制度が許す最短で走り出している。いちばん余裕があるのは神戸元町の13日後。申込期間は3日から27日まで9倍の開きがあり、同じ銘柄でも窓口が違えば期間が違う(鈴鹿は26日と7日、品川は8日と7日)。払込期日から受渡期日までは、信託型10本がそろって「翌営業日」で、同日なのはGK-TK型の横浜だけである。
表: 公募不動産ST 11銘柄・13の申込経路の日付。左から案件と窓口/届出書の提出日/申込期間/申込期間の日数(初日と最終日を含む暦日)/払込期日/受渡期日と読み、提出日の順に並べた。社名は「株式会社」等を省いて表記した。日付はEDINET提出の有価証券届出書(本文の出所欄・2026年9月23日取得のPDF)の第一部【証券情報】9・11・14欄および表紙【提出日】欄から。日数の計算は当サイト。本表は開示された日付の記録であり、募集条件の優劣の評価でも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。いくらから買えるのか——1万円から1,000万円まで、同じ銘柄の中で1,000倍
「不動産STは少額から」とよく言われる。では実際にいくら要るのか。答えは発行価格と申込単位の掛け算で出るが、その2つがどちらも銘柄・窓口によって大きく違う。
1口の発行価格は、東横INNの9,560円からシックスセンシズ京都の1,000,000円まで、100倍以上の開きがある。7銘柄が100,000円、品川が10,000円である。申込単位は1口以上1口単位から、10口以上10口単位、そして品川の法人投資家向けの1,000口以上10口単位まである。
掛け算すると、最低の申込金額は10,000円(品川・大和証券)から10,000,000円(品川・MDMの法人投資家)まで1,000倍の開きになる。注目すべきは、その最小と最大が同じ銘柄から出ていることである。品川オフィス&ホテルは、大和証券の窓口なら1万円から買えるが、MDMで法人名義の口座を使うなら1,000万円からになる。
同様のことは鈴鹿でも起きている。MDMは1口以上1口単位(=10万円から)、東海東京証券は10口以上10口単位(=100万円から)。同じ届出書の同じ表に、10倍違う数字が並んでいる。
東横INNはもう一段変わっている。申込単位が「個人投資家 10口以上10口単位」で、注記に「『法人投資家』……による申込みは行うことができないものとします」とある。11本のうち、法人を正面から締め出しているのはこの1本だけである。そしてこの銘柄だけが申込手数料を明示している——「1口当たり金400円(税込金440円)を上限として別途取扱会社が定める金額」。申込証拠金の欄も「発行価格及び申込手数料の合計額と同一の金額」と、他の10本(「発行価格と同一の金額」)と書きぶりが違う。
申込単位には逃げ道も用意されている。東横INNと品川には「ただし、取扱会社は、その単独の裁量により、上記記載の申込単位を放棄又は変更することができます」という注記がある。書かれている単位が、必ずそのとおり適用されるとは限らない。
品川 オフィス&ホテル/大和証券
10,000円
1口以上1口単位
10,000円
東横INN(MDM)
9,560円
個人投資家 10口以上10口単位(法人投資家は申込不可)
95,600円+申込手数料(上限 1口400円・税込440円)
ドーミーイン神戸元町(大和証券)
100,000円
1口以上1口単位
100,000円
市谷仲之町ほか(SBI証券)
100,000円
1口以上1口単位
100,000円
イオンタウン鈴鹿/MDM
100,000円
1口以上1口単位
100,000円
品川 オフィス&ホテル/MDM(個人)
10,000円
個人投資家 10口以上10口単位
100,000円
芝公園ほか(SBI証券)
100,000円
5口以上1口単位
500,000円
西麻布ほか(SBI証券)
100,000円
5口以上1口単位
500,000円
横浜伊勢佐木町〈GK-TK〉(ロードスター証券)
500,000円
1口以上1口単位
500,000円
KDX名古屋栄ビル(東海東京証券)
100,000円
10口以上10口単位
1,000,000円
市ヶ谷(東海東京証券)
100,000円
10口以上10口単位
1,000,000円
イオンタウン鈴鹿/東海東京証券
100,000円
10口以上10口単位
1,000,000円
シックスセンシズ京都(野村證券)
1,000,000円
1口以上1口単位
1,000,000円
品川 オフィス&ホテル/MDM(法人)
10,000円
法人投資家 1,000口以上10口単位
10,000,000円
1口の値段は9,560円から1,000,000円まで100倍以上の開きがあり、最低の申込金額は1万円から1,000万円まで1,000倍の開きがある。そして注目すべきはいちばん上といちばん下が同じ銘柄だという点——品川オフィス&ホテルは、大和証券の窓口なら1口1万円から、MDMの法人投資家なら1,000万円からになる。「1口いくら」だけを見ても要る金額は出ない。発行価格×申込単位を、自分が使う窓口について掛け算する必要がある。なお申込単位には「引受人は、その単独の裁量により、記載の申込単位を放棄又は変更することができます」という注記が置かれている銘柄がある(東横INN・品川)。
表: 公募不動産ST 11銘柄・14の申込経路の最低申込金額。左から案件と窓口/1口当たり発行価格/申込単位/その掛け算と読み、最低の申込金額の小さい順に並べた。芝公園と西麻布の発行価格は届出時「未定」(仮条件1口100,000円)で、発行価格等決定日の訂正届出書(S100SGF5・2023年12月13日/S100TG0B・2024年5月15日)によりいずれも100,000円に決定されている。数字はEDINET提出の有価証券届出書・訂正届出書(本文の出所欄・2026年9月23日取得のPDF)の第一部【証券情報】4【発行価格】・7【申込手数料】・8【申込単位】欄から。掛け算は当サイト。本表は開示された条件の記録であり、投資判断の助言でも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。応募が集まりすぎたら誰が買えるのか——届出書に「抽選」の語は1件もない
ここが本稿の中心である。人気のある銘柄は、募集口数より多くの申込みが集まりうる。そのとき誰が買えるのか。先着順なのか、くじ引きなのか、申込口数に応じた按分なのか。
11本の届出書の全文を機械的に検索した結果、「抽選」という語は1件もヒットしなかった。「按分」は4本にヒットするが、いずれも配分とは無関係である——信託銀行の財務諸表の注記(数理計算上の差異を定額法により按分)と、京都のアセット・マネジャー報酬の算式(保険料を期間で按分)だけだった。「先着」も0件、「割当」は横浜の1件(販売会社が割当金額を明示した約定通知を行う旨)のみである。
つまり、投資家にとって最も差し迫った論点——自分は買えるのか——について、届出書は何も答えていない。答えは証券会社の側にある。そして4社のルールを並べると、言葉も実体も違っていた。
野村證券のオンラインサービスの取引ルールは、こう書く。「商品の購入申込期間中に総購入申込口数がオンライン販売予定口数を上回った場合、該当商品は完売となります」。抽選ではなく、上限に達した時点で締め切られる。実質的な先着である。
SBI証券は、ヘルプの見出しに「抽選について」と掲げている。ところが本文はこうである。「需要調査期間中のお申し込み順に販売数量に達するまで当選者を決定し、販売数量を超えると補欠当選者となります。ただし、最後の当選者は残りの当選可能数量と同数量をお申し込みいただいた方の中で一番早くお申し込みいただいた方といたします(お申し込みいただいた数量の一部当選は発生しません)」。「抽選」という見出しの下に書かれているのは、申込順による配分である。一部だけ当たるということがなく、端数に合う申込みをした最も早い人が最後の当選者になる。
ALTERNA(MDMが運営する自社サービス)は、先着と抽選の両方を使う。「『先着・抽選併用方式』の場合、先着枠は仮申込の先着順に、抽選枠は抽選により当選者を決定します」。抽選枠の配分基準については「お客様の投資についての知識・経験・資力・当社との取引状況等を踏まえ、『適合性の原則』等の徹底を留意しつつ公正な配分に努めるという基本方針のもと、機械的に定められた一律の配分基準に従いお客様への配分額を決定します」と説明している。さらに「特別優先券」という仕組みがあり、付与された口数は抽選枠でも当選が確定する。
大和証券は、2025年10月31日付のお知らせでオンライントレードでのST取扱い開始を告知しているが、そこに配分方法の記載は見当たらない。書かれているのは「お客さまがお申込みいただくと、申込みをしたタイミングで『対象銘柄の募集期間最終日における買付余力』が拘束されます」という資金の扱いのほうである。
申し込んだあとで気が変わった場合の扱いも4社で割れる。野村證券は「購入申込み後の取消しはできませんので、十分にご検討のうえお申込みください」。大和証券はオンライン経由の申込みなら申込日当日中は取消可能。SBI証券は需要調査期間中は訂正・取消ができるが、当選後の購入意思表示をしたあとは「『当選』『辞退』に関わらず、お申し込み完了後の取消は承っておりません」。ALTERNAは仮申込のキャンセルができるが、「キャンセル後に再度仮申込をすることも可能ですが、最新の申込日時で申込順が決定されるため、当初先着枠だった場合でも再申込では抽選枠となる可能性がございます」という条件がつく。
誰が申し込めるかも一様ではない。野村證券のオンラインサービスは「18歳未満、満80歳以上の方」「法人のお客様(個人のお客様のみ申込みいただけます)」を明示で除外し、さらに登録済みの投資方針が所定の2区分でない顧客も申し込めないとする。大和証券は「『ダイワ・コンサルティング』コース、『ダイワ・ダイレクト』コースの個人・法人」を対象と書き、法人を排除していない。
観点
野村證券(オンライン)
大和証券(オンライントレード)
SBI証券
ALTERNA(MDM)
配分の決め方
「商品の購入申込期間中に総購入申込口数がオンライン販売予定口数を上回った場合、該当商品は完売となります」=実質先着
本稿が確認した2025年10月31日付のお知らせに配分方法の記載は見当たらない。申込みの時点で「対象銘柄の募集期間最終日における買付余力」が拘束されるとだけ書かれている
見出しは「抽選について」だが本文は「需要調査期間中のお申し込み順に販売数量に達するまで当選者を決定し、販売数量を超えると補欠当選者となります」=先着+補欠
「先着・抽選併用方式」。先着枠は仮申込の先着順、抽選枠は「機械的に定められた一律の配分基準」で配分。特別優先券を持つ口数は抽選枠でも当選が確定する
一部だけ当たることは
記載は見当たらない(完売でそれ以上申し込めなくなる)
記載は見当たらない
「お申し込みいただいた数量の一部当選は発生しません」。最後の当選者は、残り数量と同数量を申し込んだ人のうち最も早い人
先着枠と抽選枠に分かれて受け付けられるため、片方だけ当選することがある
当たらなかった人
記載は見当たらない
記載は見当たらない
補欠当選→当選者が辞退すれば繰上当選。「全ての買付数量分のお申込みを受付できず、……一部約定となる場合がございます」
補欠当選→購入申込を済ませた補欠当選者の中から「抽選」で繰上当選者を確定
申込みの取消し
「購入申込み後の取消しはできません」
オンライン経由の申込みは申込日当日(当日申込時間内)なら取消可。予約注文は翌営業日の申込締切時間まで
需要調査期間中は【訂正】【取消】が可能。ただし購入意思表示のあとは「『当選』『辞退』に関わらず、お申し込み完了後の取消は承っておりません」
仮申込のキャンセルは可能。ただし「再申込では抽選枠となる可能性」(当選枠は最新の仮申込日時で決まる)。購入完了後は数量変更不可
申し込める人
個人のみ。「18歳未満、満80歳以上の方」「法人のお客様」は申込不可。登録済みの投資方針が所定の2区分でない人も不可
「ダイワ・コンサルティング」コース、「ダイワ・ダイレクト」コースの個人・法人
記載の限定は見当たらない(ST取引専用口座の開設が必要)
記載の限定は見当たらない(スマートフォン又はタブレット端末が必要)
11本の届出書の全文に「抽選」は1件も出てこない。「按分」も配分の意味では1件もない(出てくるのは信託銀行の退職給付会計と報酬算式の中だけである)。つまり、応募が集まりすぎたときに誰が買えるのかという、投資家にとって最も差し迫った論点が、届出書のどこにも書かれていない。答えは証券会社の側にあり、しかも4社で言葉も実体も違う。SBI証券は「抽選について」という見出しの下で申込順による配分を説明しており、「抽選」という語が必ずしもくじ引きを意味しない。逆にALTERNAは先着枠と抽選枠を併用し、抽選枠については「機械的に定められた一律の配分基準」と書く。
表: 4社が公開している配分・取消しのルール。左から観点/野村證券/大和証券/SBI証券/ALTERNA(三井物産デジタル・アセットマネジメント)と読む。「買付余力」は各社の画面に表示される買付可能金額、「仮申込」はALTERNAが配分前の申込みに使う呼び名。出所は野村證券「取引ルール|セキュリティ・トークン オンラインサービス」、大和証券「ダイワのオンライントレード ST(セキュリティ・トークン)の取扱開始について」(2025年10月31日)、SBI証券「HELP-ST(セキュリティー・トークン)注文ルール」(需要申込方法・購入意思表示方法・抽選について)、ALTERNA お客様サポート「ご利用の流れ」「抽選について教えてください」「特別優先券とは何ですか」(いずれも2026年9月23日確認)。届出書の語の件数は当サイトが11件の全文を機械集計した。本表は各社が公開しているルールの記録であり、証券会社の優劣の評価でも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。お金はいつ動くか——「払込期日」は投資家の入金期限ではない
届出書の11【払込期日及び払込取扱場所】欄には、はっきりした日付が書いてある。品川なら2026年8月31日、京都なら2026年9月1日。ここを自分の入金期限だと読むと間違える。
野村證券は、この誤解を名指しで注意している。「各商品の購入申込期間などは、『セキュリティ・トークン商品一覧』のページや各商品のページからご確認ください。目論見書や商品説明資料に記載の募集期間や入金最終日などとは期限が異なります。特に、目論見書記載の『払込期日』は、証券会社が発行企業に申込証拠金の総額を払い込む日であり、お客様のご入金最終日とは異なりますのでご注意ください」。
実際、投資家の資金は払込期日よりずっと前に動かせなくなる。大和証券は「前受け制」と明記し、「お客さまが買付注文を行なう際に買付代金相当の資金をあらかじめ当社口座にご準備いただくことでご注文いただく取引方法」と定義したうえで、申込みをしたタイミングで募集期間最終日における買付余力を拘束する。野村證券は申込み時点で「申込可能金額」を確認し、足りなければそもそも申込みができない仕組みで、拘束は購入申込みの翌営業日(17:00以降の申込みは2営業日後)である。
SBI証券は、抽選日の18:00以降に買付余力を確認し、その時点で資金がなければ「抽選対象外」となる。当選・補欠当選した人については「発行価格×当選口数(または補欠当選口数)」が拘束され、「ご購入により拘束されているご資金は、受渡日の前日まで、当社預り金、MRFまたはスィープ専用銀行口座にてお預りしております」。ALTERNAは入金期限までに投資可能額が不足していると当選対象外になる。
GK-TK型の横浜は、届出書そのものに順序が書かれている。「出資者は、口座開設後インターネットでの申込みに先立って、申込証拠金を販売会社の指定する口座に振込みます」。申し込んでから振り込むのではなく、振り込んでから申し込む。そして「出資者は、本匿名組合契約締結の申込後は、申込みを撤回することはできません。また申込証拠金も本匿名組合契約に別途記載のある場合を除き返還を受けることはできません」と続く。
この拘束された資金に利息はつかない。11本すべてが「申込証拠金には利息をつけません」と書く。横浜も「申込証拠金として保管される期間についての利息は付されません」と同じことを書いている。申込期間が27日間の横浜で初日に申し込めば、受渡し(2026年8月28日)まで27日間、その資金は動かない。
締切の時刻も届出書には書かれていない。野村證券は「原則として、購入申込期間最終日の17:00まで」(銘柄によっては異なる時限を定める場合がある)。大和証券のオンライントレードは平日6:00〜17:00が受付時間で、「オンライン申込期間の最終日のみ、受付時間は6:00~12:00です」。届出書に「2026年8月27日まで」と書かれていても、その日の正午で閉まる窓口がある。
ほぼ全社が「前受け」① 申し込む前
大和証券は「前受け制」と明記する——「お客さまが買付注文を行なう際に買付代金相当の資金をあらかじめ当社口座にご準備いただくことでご注文いただく取引方法」。野村證券も申込み時点で「申込可能金額」を確認し、足りなければ申込みそのものができない。ロードスター証券の届出書は「出資者は、口座開設後インターネットでの申込みに先立って、申込証拠金を販売会社の指定する口座に振込みます」と書く。申し込んでから振り込む、という順序ではない。
資金が拘束される(時点は各社で違う)② 申し込んだ瞬間
大和証券は申込みをしたタイミングで「対象銘柄の募集期間最終日における買付余力」を拘束する。野村證券は購入申込みの翌営業日に約定処理を行い買付代金を拘束する(17:00以降の申込みは2営業日後)。SBI証券は抽選日の18:00以降に買付余力を確認し、当選・補欠当選した人の「発行価格×当選口数」を拘束する。ALTERNAは入金期限までに投資可能額が不足していると当選対象外になる。
届出書の日付より早い③ 締切の時刻
野村證券は「原則として、購入申込期間最終日の17:00まで」(銘柄によって異なる時限あり)。大和証券のオンライントレードは平日6:00〜17:00受付で「オンライン申込期間の最終日のみ、受付時間は6:00~12:00」。届出書に「2026年8月27日まで」と書いてあっても、その日の何時までかは届出書には書かれていない。
証券会社→発行者の日④ 払込期日
届出書の11【払込期日】欄の日付。引受人が発行価額の総額を委託者に払い込む日であり、投資家の入金期限ではない。SBI証券は「ご購入により拘束されているご資金は、受渡日の前日まで、当社預り金、MRFまたはスィープ専用銀行口座にてお預りしております」と書く。
口座に反映される日⑤ 受渡期日
信託型10本は払込期日の翌営業日。この日に受益権原簿へ記録され、残高として見えるようになる。SBI証券は「約定となった場合、商品の受渡日に『口座管理>口座(円建)>ST』画面に表示されます」、ALTERNAは「案件情報に記載されている受渡予定日にご購入いただいた金額分口座残高から減額されます」と書く。
投資家から見ると、お金は「申し込む前に入れて、当たるかどうか分からないまま拘束され、受渡日に引かれる」という順序で動く。届出書が定めているのは④と⑤だけで、実際に自分の資金が動かせなくなる①〜③は、すべて証券会社の側のルールである。申込証拠金に利息はつかない(11本すべてが「申込証拠金には利息をつけません」と書く)ので、拘束期間が長いほど機会費用は静かに積み上がる。いちばん長い横浜では、申込初日(2026年8月1日)に申し込んだ人の資金が、受渡し(8月28日)まで27日間動かせない計算になる。
図: 申込みから受渡しまでにお金が動く5つの時点。上から時間順に読む。「買付余力」「投資可能額」は各社の画面上の呼び名で、いずれも買付に使える金額を指す。出所はEDINET提出の有価証券届出書11件(第一部【証券情報】10・11・14欄)と、野村證券・大和証券・SBI証券・ALTERNAの各社公開ルール(いずれも本文の出所欄・2026年9月23日確認)。日数の計算は当サイト。本図は手続の記録であり、投資判断の助言でも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。口座の側で要るもの——保護預り契約、取引管理約款、そして専用口座
証券口座があれば買える、とは限らない。届出書の14【その他】(3)①は、信託型10本すべてが保護預り契約の締結を条件にしている。代表的な書きぶりはこうである。「本受益権の申込みに当たっては、当初取扱金融商品取引業者と保護預り契約を締結する必要があり、本受益権の譲渡承諾依頼及び受益権原簿の名義書換請求を当初取扱金融商品取引業者に委託することが必要です」(後年の銘柄では「当初取扱」が「取扱」「各取扱」に変わるが、条件そのものは同じである)。
3本(鈴鹿・品川・京都)では、ここに「トークン化有価証券取引管理約款」が加わる。「取扱金融商品取引業者と保護預り契約及びトークン化有価証券取引管理約款を締結する必要があり」という書き方である。残る7本にはこの語がなく、2026年3月の東横INNにも出てこない。銘柄ごとに、証券会社側で結ぶ契約の枚数が違う。
証券会社によっては、口座そのものを別に開く必要がある。SBI証券は「証券総合口座をお持ちの方はこちら ST取引専用口座開設/証券総合口座をお持ちでない方はこちら 証券総合口座同時開設」と案内し、「ST取引専用口座とは、セキュリティ・トークン商品を取引するための専用口座をいいます」と注記する。総合口座があっても、それだけでは申し込めない。
ALTERNAは口座そのものが独立している。必要なのは「スマートフォン又はタブレット端末」「当社指定の本人確認書類・マイナンバー確認書類」「銀行口座の『口座番号』・『支店名又は支店コード』」で、7段階の入力を経て本人確認書類を提出する。「口座開設にあたっての本人確認の結果は、本人確認書類の提出後、最短即日でご登録のメールアドレスにご連絡します」。逆に言えば、募集の最終日に思い立っても間に合わない可能性がある。
口座区分も決めておく必要がある。11本のうち6本(神戸元町・名古屋栄・市ヶ谷・東横INN・品川・京都)は課税上の取扱いの欄に「なお、本受益権はNISA口座の対象外となります」と明記しており、SBI証券も購入画面の預り区分について「NISA口座の対象外であり、一般預り・特定預りでのお買付となります」と表示する。特定口座が使えるかどうかは商品と証券会社による——SBI証券の既発STの買付画面は「※現在は『一般預り』のみとなります」とされている。ALTERNAは特定口座(源泉徴収あり・なし)を選べ、特定口座年間取引報告書を電子交付する。制度の中身は別稿『特定口座で不動産STは買えるのか——入口は3つだけ、分配金はもう1枚の届出、NISAは対象外』で扱った。なお税務の取扱いは一般的な解説であり、個別の適用は税理士等の専門家に確認してほしい。
目論見書の渡され方も変わってきている。金商法第15条第2項は「目論見書をあらかじめ又は同時に交付しなければならない」と定めるが、第27条の30の9第1項は電磁的方法による提供を交付とみなす。11本のうち6本(芝公園・西麻布・鈴鹿・東横INN・品川・京都)が【その他】欄に「目論見書の電子交付について」という項を置き、「原則として、書面ではなく、電子交付により行います」と書いている。残る4本(神戸元町・名古屋栄・市ヶ谷・市谷仲之町)と横浜には、この項がない。
買ったあと——記録日、受渡日、そして「いつ売れるようになるか」
払込期日の翌営業日、受益権原簿に自分の記録が載る。この日が受渡期日であり、分配金を受け取る資格が生まれる起点でもある。分配金がいつ・どう入るかは別稿『分配金はいつ・どう入るか——権利確定日は決算日、支払日は2026年に「2か月後」へ動いた』で扱った。
そのうえで、買う前に必ず確かめておきたいのが「いつ売れるようになるか」である。これは第一部14【その他】(3)に書いてあり、銘柄によって大きく違う。
初期の4本——神戸元町・芝公園・西麻布・市谷仲之町——は、受渡期日がそのまま取引開始日だった。「本受益権は、STARTにおいて取り扱われることを予定しており、2023年12月25日(月)(以下「取引開始日」といいます。)より当初取扱金融商品取引業者による注文の取次ぎを通じてSTARTにおいてODXの定める売買方法によって取引を行うことができる」。受け取った日から売れる設計である。
名古屋栄と市ヶ谷は「受渡期日の翌営業日(以下「取引開始日」といいます。)より売却が可能となります」としたうえで、STARTでの取扱いは届出時点で未定と明記していた。「本書の日付現在、本受益権がSTARTにおいて取り扱われることは決定しておらず、したがって、今後本受益権がSTARTにおいて取り扱われない可能性があります」。
2024年後半から、設計が変わる。鈴鹿は「本受益権は、2025年11月4日(火)(以下「取引開始日」といいます。)より売却が可能となります」——払込期日(2024年11月28日)の341日後である。しかも「引受人らの合意により、取引開始日が2025年11月4日(火)より前の日に変更される可能性があります」という条件つきだった。
直近の2本はさらに間接的な書き方になる。品川は「2027年2月末日に終了する信託計算期間の終了後に最初に到来する決算発表日以降……売却が可能となります」、京都は「2027年7月31日に終了する信託計算期間の終了後最初に到来する決算発表日の翌営業日以降の取扱金融商品取引業者が定める一定の期間に売却が可能です」。いずれも確定日ではなく、決算発表日に紐づいている。品川にはさらに注記がある。「払込期日の翌営業日以降、取扱金融商品取引業者を直接の相手方として売却することが可能となる時期は、本書の日付現在において取扱金融商品取引業者が定めたものです。なお、当該時期については、今後変更される可能性があります」。
GK-TK型の横浜は、そもそも売り方が違う。「本匿名組合出資持分の譲渡等の取引は、本プラットフォーム上でしか行えず、原則として、ロードスター証券株式会社が相手方となる相対取引となります」。STARTのような市場を経由しない。
STARTで取り扱われる銘柄について、実際に売るときに何が起きるかは別稿『STARTで売るとき何が起きるか——1日2回の板寄せ、板の薄さ、対NAV乖離の読み方』で、値動きと流動性の実数は別稿『不動産STのリスクを実数で確かめる——上場7銘柄はすべて発行価格割れ、7銘柄×13営業日の78%は1口も約定していない』で扱った。
ドーミーイン神戸元町
2023-12-25
受渡期日=取引開始日。この日からSTARTでの取引と、当初取扱業者が直接の相手方となる取引ができる
芝公園ほか
2023-12-25
同上(当初取扱業者が相手方になるのは「認める一定の場合」に限る)
KDX名古屋栄ビル
受渡期日(2024-03-19)の翌営業日
「受渡期日の翌営業日(以下「取引開始日」といいます。)より売却が可能となります」。STARTでの取扱いは届出時点で未定(のちに開始)
市ヶ谷
受渡期日(2024-05-27)の翌営業日
同上
東横INN
2026-03-31
払込期日の翌営業日より売却が可能
横浜伊勢佐木町〈GK-TK〉
2026-08-28
受渡期日=払込期日。譲渡は本プラットフォーム上でしか行えず、原則としてロードスター証券が相手方となる相対取引
イオンタウン鈴鹿
2025-11-04
払込期日(2024-11-28)の341日後。MDMが当初取扱業者となる分は「2025年10月末日に終了する信託計算期間の終了後に最初に到来する決算発表日の翌営業日」
品川 オフィス&ホテル
未定(2027年)
「2027年2月末日に終了する信託計算期間の終了後に最初に到来する決算発表日以降」。払込期日は2026-08-31で、約半年後にあたる
シックスセンシズ京都
未定(2027年)
「2027年7月31日に終了する信託計算期間の終了後最初に到来する決算発表日の翌営業日以降の取扱金融商品取引業者が定める一定の期間」。払込期日は2026-09-01で、約11か月後にあたる
初期の4本は受渡しの当日から売れたが、2024年後半以降は「決算発表日以降」という設計が現れ、待ち時間が半年から1年近くに延びている。鈴鹿は実際に341日間売れなかった。しかも品川・京都の日付は確定日ではなく「決算発表日」に紐づく未定の日で、品川の届出書には「当該時期については、今後変更される可能性があります」という注記まで置かれている。買う前に確かめるべきは「いつ売れるか」ではなく「いつ売れるようになると書いてあるか」であり、それは第一部14【その他】(3)に書いてある。
表: 公募不動産ST 11銘柄が「売却できるようになる日」。左から案件/その日/届出書の書きぶりと読み、受渡し当日から売れる銘柄を上に、待ち時間の長いものを下に並べた。「当初取扱金融商品取引業者」は投資家と保護預り契約を結ぶ証券会社、「START」は大阪デジタルエクスチェンジが運営するセキュリティ・トークン私設取引システムを指す。出所はEDINET提出の有価証券届出書11件(本文の出所欄・2026年9月23日取得のPDF)の第一部【証券情報】14【その他】(3)欄。日数の計算は当サイト。本表は開示された設計の記録であり、売却機会を保証するものでも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。実務の勘所——申し込む前に確かめる8項目
まとめる。不動産STを買うまでの手順は、届出書が決める線と証券会社が決める線の2本でできている。届出書はEDINETで誰でも読めるが、そこに書かれているのは申込期間の日付・申込単位・申込証拠金・払込期日・受渡期日・売却開始時期までである。
書かれていないものが3つある。第一に、配分の方法。11本の全文に「抽選」は1件もなく、「按分」も配分の意味では0件だった。第二に、締切の時刻。届出書には日付しかない。第三に、投資家の入金期限。「払込期日」は証券会社が発行者へ払い込む日であって、投資家のカレンダーの日付ではない。
この3つはいずれも証券会社の側にあり、しかも各社で実体が違う。野村證券は完売方式で取消不可、個人のみ・18歳以上80歳未満。大和証券は前受け制で当日中なら取消可、個人・法人とも可。SBI証券は「抽選」という見出しの下で申込順に配分し、補欠当選と繰上当選を置く。ALTERNAは先着枠と抽選枠を併用し、特別優先券で当選を確定させる仕組みを持つ。買う前に、自分が使う窓口のページを一度は開いておく必要がある。
金額についても、「1口いくら」だけを見ても要る金額は出ない。1口の発行価格は9,560円から1,000,000円まで100倍以上、最低の申込金額は10,000円から10,000,000円まで1,000倍の開きがある。しかもその最小と最大は同じ銘柄(品川オフィス&ホテル)から出ている。発行価格×申込単位を、自分が使う窓口について掛け算すること。
最後に、出口である。受渡し当日から売れる銘柄と、決算発表日まで半年から1年近く待つ銘柄がある。鈴鹿は実際に341日間売れなかった。品川・京都は日付そのものが未定で、「今後変更される可能性があります」と注記されている。買うかどうかを決める前に、第一部14【その他】(3)を読むこと——そこに何と書いてあるかが、資金が拘束される期間の下限になる。
本稿は届出書と各社の公開ルールの記録であり、特定の銘柄や事業者の推奨・勧誘ではない。また税務の記述は一般的な解説であり、特定口座の選択や確定申告の要否など個別の取扱いは、税理士等の専門家に確認してほしい。
① その窓口で口座が開けるか、期限に間に合うか
証券総合口座とは別に専用口座が要ることがある(SBI証券の「ST取引専用口座」)。ALTERNAはスマートフォン又はタブレット端末と本人確認書類・マイナンバー確認書類・銀行口座情報が要り、本人確認の結果は「最短即日」。野村證券のオンラインは18歳未満・満80歳以上・法人が申し込めず、登録済みの投資方針によっても弾かれる
② 発行価格 × 申込単位 を、自分が使う窓口について計算したか
1口の値段は9,560円から1,000,000円まで、最低申込金額は10,000円から10,000,000円まで開く。同じ銘柄でも窓口で変わる(品川は大和証券1万円/MDM法人1,000万円)
③ 申込手数料の欄と、発行価格・発行価額の差を両方見たか
「該当事項はありません」でも、発行価格と発行価額の差が引受人の手取金として存在する。東横INNだけは逆に、申込手数料を1口400円(税込440円)を上限として明示している。詳しくは別稿『発行価格は10本すべて1口当たりNAV試算値を下回っていた』で扱った
④ 申込期間の「最終日の何時まで」を確認したか
届出書には日付しかない。野村證券は原則17:00、大和証券のオンライントレードは最終日のみ6:00〜12:00。締切を過ぎれば次の機会はない
⑤ 配分の方法を、その証券会社のページで読んだか
届出書に「抽選」の語は1件もない。先着か、抽選か、その併用かは各社のルール次第で、「抽選について」という見出しの下に申込順の配分が書かれていることもある
⑥ いつ資金が拘束され、いつまで動かせないかを把握したか
申込証拠金に利息はつかない。拘束の開始は申込時・翌営業日・抽選日18:00以降と各社で違い、解放されるのは辞退・落選・受渡しのいずれかの時点である
⑦ 「いつ売れるようになるか」を第一部14【その他】(3)で読んだか
受渡し当日から売れる銘柄と、決算発表日まで半年〜1年近く売れない銘柄がある。しかもその時期は「今後変更される可能性があります」と注記されていることがある。売り方そのものは別稿『STARTで売るとき何が起きるか』で扱った
⑧ 口座区分(特定口座・一般口座)を決めたか
NISAは対象外である(SBI証券・ALTERNAとも明記し、届出書にも「本受益権はNISA口座の対象外となります」とある)。特定口座を選べるかは証券会社による——SBI証券の既発STは現在「一般預り」のみ、新規発行STは一般・特定の両方。制度の中身は別稿『特定口座で不動産STは買えるのか』で扱った。個別の取扱いは税理士等の専門家に確認すること
上から順に、①口座 → ②③金額 → ④⑤申込み → ⑥資金 → ⑦出口 → ⑧税の入れ物と進む。①④⑤⑥は届出書を読んでも分からず、証券会社のページを開く必要がある。②③⑦は届出書(=目論見書)に書いてあり、口座がなくてもEDINETで読める。
図: 不動産STに申し込む前に確かめる8項目。出所は本文の出所欄(金融商品取引法・EDINET提出の有価証券届出書11件および訂正届出書2件・野村證券・大和証券・SBI証券・ALTERNAの各社公開ルール)。本図は一般的な確認項目の整理であり、投資判断の助言でも、特定の事業者・銘柄の推奨・勧誘でもない。税務の取扱いは一般的な解説であり、個別の適用は税理士等の専門家に確認すること。SOURCES / 出所
- 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)——第2条第3項第1号(募集=50名以上への取得勧誘)、第4条第1項(募集又は売出しの届出)、第5条第1項ただし書(発行価格等を記載しない届出書)、第8条第1項(届出は受理日から十五日を経過した日に効力を生ずる)・第2項(期間内の訂正届出書の受理日に受理があったものとみなす)・第3項(期間の短縮)、第13条第1項・第2項(目論見書の作成と記載事項)、第15条第1項(効力発生前の取得禁止)・第2項(あらかじめ又は同時に交付する義務)、第27条の30の9第1項(電磁的方法による目論見書記載事項の提供=交付とみなす)(e-Gov法令検索 API・2026年9月23日取得)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町(デジタル名義書換方式)——株式会社SMBC信託銀行/株式会社KST7・2023年11月20日提出・書類番号S100SB9N(第一部【証券情報】6〜14欄)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)いちご・レジデンス・トークン-芝公園ほか-(デジタル名義書換方式)——三菱UFJ信託銀行株式会社/合同会社IRS3・2023年11月20日提出・書類番号S100SBPF、および発行価格を確定させた訂正届出書・2023年12月13日提出・書類番号S100SGF5(発行価格100,000円・発行価額94,000円・引受人手取金1口当たり6,000円)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)ケネディクス・リアルティ・トークン KDX名古屋栄ビル——株式会社SMBC信託銀行・2024年2月9日提出・書類番号S100SRLJ(募集の取扱い型・取扱手数料4.10%・申込数が発行数に満たない場合の中止条項)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)トーセイ・リアルティ・トークン 市ヶ谷——2024年4月15日提出・書類番号S100T9M6(募集の取扱い型・取扱手数料4%・本信託財産より支払)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)いちご・レジデンス・トークン-西麻布ほか-——三菱UFJ信託銀行株式会社/合同会社IRS4・2024年4月22日提出・書類番号S100TAY3、および発行価格を確定させた訂正届出書・2024年5月15日提出・書類番号S100TG0B(発行価格100,000円・1口当たりNAV試算値107,436円)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)いちご・レジデンス・トークン-市谷仲之町ほか-——株式会社SMBC信託銀行・2024年9月20日提出・書類番号S100UE49
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)三井物産グループのデジタル証券 イオンタウン鈴鹿——みずほ信託銀行株式会社・2024年10月16日提出・書類番号S100UJK9(引受人ごとに申込単位・申込期間・申込取扱場所を分けた表/取引開始日2025年11月4日)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)三井物産グループのデジタル証券 東横INN——2026年2月24日提出・書類番号S100XMTM(発行価格9,560円・申込手数料1口400円〈税込440円〉を上限・個人投資家10口以上10口単位・法人投資家は申込不可・募集の取扱兼引受=残額引受)
- 有価証券届出書(内国有価証券投資事業権利等)ロードスターグループのデジタル証券 横浜伊勢佐木町ホテル——合同会社LST1号・2026年7月16日提出・書類番号S100YR0W(第六号の五様式・GK-TK型/1口500,000円・インターネット完結・申込証拠金の事前振込・申込撤回不可・出資の受入れの中止4事由・取扱手数料3.0%)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)三井物産グループのデジタル証券 品川 オフィス&ホテル——株式会社SMBC信託銀行・2026年7月24日提出・書類番号S100YS50(発行価格10,000円・発行数1,740,000口/大和証券1口以上1口単位・MDM個人10口以上10口単位・MDM法人1,000口以上10口単位/主幹事 大和証券/売却可能時期は2027年2月末に終了する信託計算期間の終了後最初の決算発表日以降)
- 有価証券届出書(内国信託受益証券等)ウェルス・リアルティ・トークン シックスセンシズ京都——株式会社SMBC信託銀行・2026年8月3日提出・書類番号S100YTNX(発行価格1,000,000円・引受人 野村證券/売却可能時期は2027年7月31日に終了する信託計算期間の終了後最初の決算発表日の翌営業日以降)
- 野村證券「取引ルール|セキュリティ・トークン オンラインサービス」——申込みの概要・購入・売却(総購入申込口数がオンライン販売予定口数を上回った場合は完売/購入申込み後の取消し不可/18歳未満・満80歳以上・法人は申込不可/原則として購入申込期間最終日の17:00まで/買付代金の拘束は購入申込みの翌営業日・17:00以降の申込みは2営業日後/「目論見書記載の『払込期日』は、証券会社が発行企業に申込証拠金の総額を払い込む日であり、お客様のご入金最終日とは異なります」/売却はオンライン不可)(2026年9月23日確認)
- 大和証券「ダイワのオンライントレード ST(セキュリティ・トークン)の取扱開始について」2025年10月31日——対象顧客は「ダイワ・コンサルティング」コース・「ダイワ・ダイレクト」コースの個人・法人/受付時間 平日6:00〜17:00(17:00〜翌3:00は予約申込)・オンライン申込期間の最終日のみ6:00〜12:00/前受け制/申込みをしたタイミングで募集期間最終日における買付余力を拘束/オンライン経由の申込みは申込日当日中は取消可(2026年9月23日確認)
- SBI証券「HELP-ST(セキュリティー・トークン)注文ルール」——需要申込方法(申込みの訂正・取消が可能)/購入意思表示方法(購入意思表示後は訂正・取消不可・期間内に表示しなければ辞退扱い・NISA口座の対象外)/抽選について(需要調査期間中のお申し込み順に販売数量に達するまで当選者を決定・超過分は補欠当選・一部当選は発生しない・抽選作業は抽選日18:00以降・買付余力の拘束と解放のタイミング・繰上当選)/買付方法(既発ST・預り区分は現在「一般預り」のみ)/売却方法(カスタマーサービスセンター対応)(2026年9月23日確認)
- SBI証券「少額から不動産オーナーに!新たな不動産投資手法 不動産ST(セキュリティ・トークン)」——証券総合口座とは別に「ST取引専用口座」の開設が必要である旨(2026年9月23日確認)
- ALTERNA お客様サポート(三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社)「ご利用の流れ」(口座開設→案件の確認→案件への仮申込→ご入金→当選結果発表→購入申込→繰上当選→約定・受渡/先着枠と抽選枠/購入完了後は数量変更不可/購入期限までに申込まなければ辞退扱い)、「口座開設の流れを教えてください」(スマートフォン又はタブレット端末・本人確認書類・マイナンバー確認書類・銀行口座情報/本人確認の結果は最短即日)、「抽選について教えてください」(抽選方式・抽選回数・当選結果通知)、「特別優先券とは何ですか」(先着・抽選併用方式/付与口数は抽選枠でも当選確定)、「特定口座とは?」(源泉徴収あり・なしの2種類)(2026年9月23日確認)
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。
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