2026-07-16 / 読了 10分
公募の不動産ST(受益証券発行信託型)に投資したとき、税金はどこで、どのようにかかるのか。商品段階の非課税から、分配金・売却・利益超過分配・償還まで、時系列で課税関係を整理する。
税金の話に入る前に、2つだけ言葉を押さえたい。「源泉徴収」は、支払う側(証券会社等)が税金を天引きして国に納めてくれる仕組み。「申告分離課税」は、給与などの他の所得と合算せず、その所得だけ一定税率(金融商品は20.315%)で完結させる方式だ。公募の不動産STはこの2つの恩恵をフルに受けられる設計になっている——それがどの場面でどう効くかを、これから順に見ていく。
受益証券発行信託型の不動産STは、税務上の「特定受益証券発行信託」の要件(受託者が税務署長の承認を受けた法人であること、未分配利益の制限等)を満たすように組成される。この場合、信託は集団投資信託として扱われ、信託段階では課税されず、受益者が分配を受けた時点で課税される(受益者段階課税)。投資信託と同じ構造だ。
逆にこの要件を外れると法人課税信託となり、信託段階で法人税が課されて商品リターンが直撃を受ける。組成実務で税務要件の充足が最重要チェックポイントとされる理由であり、AMと信託銀行が分配政策を設計する際の大前提になる。
投資家(個人)が受け取る収益分配金は配当所得に当たり、20.315%(所得税15.315%・住民税5%)が源泉徴収される。公募の特定受益証券発行信託の受益権は金融所得課税上「上場株式等」のグループに入るため、申告分離課税を選択して上場株式等の譲渡損失と損益通算することもできる。特定口座(源泉徴収あり)に受け入れれば、原則として確定申告なしで完結する。
なお、不動産の現物やGK-TK型(匿名組合)と違い、不動産所得や雑所得にはならない。個人投資家にとって申告実務が軽いことが、このスキームがリテール向けに選ばれる大きな理由になっている。
個人投資家に税金が関係する場面は3つしかない。先に全体を図で掴んでおこう。
減価償却費相当を原資とする利益超過分配(元本の払戻し)を行う銘柄では、令和7年度税制改正により2026年4月1日以後の払戻しの取扱いが変わった。改正前は分配金全体が配当課税されていたが、改正後は元本払戻し部分が「みなし譲渡」となり、投資家は自分の取得価額に、AMが公表する「元本減少割合」を乗じて譲渡損益を計算し、取得価額を減額して次回に持ち越す。
源泉徴収ありの特定口座なら証券会社が自動処理するが、一般口座・源泉なし特定口座では確定申告が必要になる。計算手順と数値例は別稿「元本減少割合とは何か」、改正の背景は「令和7年度税制改正と利益超過分配」で詳しく整理している。ODXの銘柄情報では、次回予想分配金について利益配当と元本払戻しの内訳を公表する銘柄もあり、当サイトの銘柄ページ(運用状況)にも収録している。
START等での売却益は、上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税20.315%の対象になる。取得価額は、利益超過分配で減額調整した後の金額を使う点に注意したい。取得時期が複数回に分かれる場合は総平均法に準ずる方法で単価を計算する。償還時も、償還金額と取得価額の差額が譲渡損益として扱われる。
法人投資家の場合は受取分配金・譲渡損益とも益金・損金に算入され、源泉徴収された所得税は法人税額から控除するのが基本形になる。機関投資家が絡む私募案件では、この法人段階の取扱いとGK-TK型との比較が商品設計の論点になる。
税務の取扱いは投資家の属性・口座区分・改正の経過措置によって異なる。実際の申告・投資判断にあたっては、必ず税理士等の専門家、および各商品の目論見書・契約締結前交付書面を確認してほしい。当サイトは独立・非勧誘の市場データベースとして、公表された制度と一次資料の整理のみを行っている。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。