2026-07-17 / 読了 9分
「STOっていくらかかるの?」に一言で答えられる公表資料はない。だが、費目の全体地図と負担構造は描けるし、個別ファンドの実額は実は開示書類に載っている。見積もり交渉の前に押さえるべきコストの解剖図。
国内の不動産STの実例が数億円以上、公募の中心が数十億円規模の物件で占められているのは偶然ではない。STの組成・運用には規模にかかわらず発生する固定費の束があり、これをファンドが吸収して投資家利回りを残すには、一定以上の資産規模が必要になるからだ。固定費が同じなら、10億円のファンドと50億円のファンドでは利回りへの影響が5倍違う——最低ロットの正体は、この算数である。
コストは「組成時(一発)」と「期中(毎期)」に分けて棚卸しするのが実務的だ。組成時: 弁護士費用(信託契約・届出書のリーガルチェック)、不動産デューデリジェンス(鑑定評価・エンジニアリングレポート)、信託設定関連(登録免許税等の流通税)、届出書作成・開示対応、プラットフォーム接続の初期費用、販売会社の引受・販売手数料。START上場を狙うなら、ODXの新規取扱審査料・新規取扱手数料も加わる。
期中: 川上・川下それぞれの信託報酬、AM報酬、事務委託(会計)費用、監査報酬(公募は継続開示のため毎期必須)、鑑定評価の更新費用(半期ごとが実務標準)、プラットフォーム利用料、STARTの年間取扱管理料・START-NET使用料、そして地味に効くSPC維持費(均等割・税務申告)。どの費目がどの層(川上信託/川下信託/GK)に載るかは、別稿「Day1からのキャッシュフローの作り方」で整理した通り、モデルの精度を左右する設計事項だ。
総じて、私募の不動産ファンド(GK-TK)と比べたSTの追加コストは、①公募開示と監査、②プラットフォーム、③二層目の信託——の3点に集約される。その見返りが、リテール資金へのアクセスと二次流通(START)である。
ここからが本稿の実務的な提案だ。個別ファンドの費用の実額は、EDINETの有価証券届出書・有価証券報告書のファンド費用の項に開示されている。信託報酬・AM報酬の料率、監査報酬、その他費用——公募STは開示商品なのだから、先行案件の開示書類こそが最良の「相場表」になる。
当サイトの銘柄データベースから気になる銘柄を開き、「記録・出所」欄のEDINETリンクで届出書を確認すれば、同規模・同アセットの先行例の費用水準を自分で確かめられる。ベンダーの見積もりを鵜呑みにする前に、開示された実額と突き合わせる——これが記録が揃った市場の正しい使い方だ。
なお、費用の絶対額・料率は案件規模や座組によって大きく異なり、本稿は特定の水準を示すものではない。個別の見積もり・設計は、必ず各専門家(弁護士・会計士・信託銀行・基盤事業者)への相談で確定してほしい。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。