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償却系アセットはなぜSTに向くのか——FFOで読む商品設計

2026-06-02 / 読了 9

物流施設やホテルを裏付けとするSTが増えている。その背景にあるのは「会計利益とキャッシュフローの乖離」という不動産金融の基本構造と、それを分配に活かせるようになった税制の整備だ。

会計利益とキャッシュの乖離

先に用語を2つ。「減価償却」は建物などの価値の目減りを毎期の費用として計上する会計処理で、費用なのに現金は出ていかないのが特徴だ。「FFO」は当期利益にこの減価償却費を足し戻した指標で、ファンドが実際に生んだ現金の力を表す。この2つが分かると、償却系アセットのSTがなぜ「会計利益は小さいのに分配は厚い」のかが読めるようになる。

減価償却費は費用として計上されるが、現金は流出しない。このため償却の重い物件は、会計利益は薄いのにキャッシュ創出力は高いという状態になる。単純化した例で、投資額100の物件がNOI5.0を生み、減価償却が2.5だとすると、会計利益は2.5しかないのに手元に残るキャッシュは5.0ある。J-REITの分析で使われるFFO(Funds From Operations=利益+減価償却費)は、まさにこの乖離を捉えるための指標だ。

分配型商品の競争力は、この乖離分——償却相当のキャッシュ——を分配に回せるかどうかで大きく変わる。利益の範囲でしか分配できなければ表面利回りは2.5%の商品にしかならないが、利益超過分配ができれば同じ物件で5%の商品が設計できる。

税制が償却系アセットを解放した

受益証券発行信託型STでは、2026年3月まで利益超過分配の全額が配当として20.315%課税されており、償却の重いアセットほど税制上不利だった。令和7年度改正で利益超過分配が「元本の払戻し」となり当期課税の対象外になったことで、この構図は逆転した。分配5.0のうち利益2.5・元本払戻し2.5というモデルで税引後手取りを比べると、改正前の約3.98に対して改正後は約4.49。恩恵は償却の重さに比例する。

アセット別に見ると、冷凍冷蔵設備を持つ物流施設(機械装置の短期償却)とホテル(建物・設備にFF&Eの償却が乗る)が最も有利で、土地比率の高い都心一等地オフィスは恩恵が小さい。改正後の新規組成で物流・ホテル型の存在感が増すとすれば、それは税制が導いた合理的な帰結と言える。

投資家が注意すべきこと

利益超過分配は、自分が出したお金が戻ってくる部分であり、経済的な意味での「利回り」ではない。分配のたびに元本(NAV)は減少する。もっとも、減価償却の範囲内の払戻しは物件の帳簿上の減価と対応しており、いわゆるタコ足配当とは区別される——土地は償却しないため、実物価値が帳簿ほど減っていないことも珍しくない。

それでも、表面の分配利回りだけで商品を比較するのは危険だ。分配のうち利益部分と元本払戻し部分の内訳、そして物件の実質的な価値維持力を合わせて見る習慣が、この市場では従来の投資商品以上に重要になる。

SOURCES / 出所

本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

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