2026-07-16 / 読了 7分
ODX『START』の銘柄情報に並ぶ「基準価格」と「NAV」。似て非なるこの2つの数字がどう決まり、なぜ大きく乖離するのかを整理する。上場全銘柄の実数は当サイトのトップページで確認できる。
前提として、STARTは証券取引所ではなくPTS(私設取引システム)と呼ばれる民間の取引の場だ。とはいえ役割は取引所と同じで、売り手と買い手の注文を突き合わせて値段をつける。その「ついた値段」に関する数字が基準価格である。
STARTはセキュリティトークンの私設取引システム(PTS)で、注文を価格優先・時間優先で付け合わせる板寄せを1日複数回行う。基準価格(基準値段)は、原則として前営業日の最終値段——つまり市場で最後に成立した取引等に基づく価格で、翌営業日の値幅制限などの基準になる。詳細な算出ルールはODXのセキュリティトークン取引に係る業務規程・マーケットガイドに定められている。
重要なのは、基準価格は「市場参加者の売買が付けた値段」だということ。取引が薄ければ古い約定を引きずり、売り急ぎが一件あれば下に振れる。株式の終値と同じ性質の数字である。
一方のNAV(Net Asset Value)は、不動産鑑定士の鑑定評価額等から借入等の負債を控除して算出した、1口当たりの純資産価値である。市場の需給ではなく、不動産のファンダメンタルズから積み上げた理論値であり、半年ごとの鑑定評価の更新に合わせて改定されるのが実務標準だ(詳細は別稿「不動産ST運用実務の期限とサイクル」)。ODXの銘柄詳細には「NAV(直近公表)」として掲載される。
つまり基準価格とNAVは「市場価格」と「理論価値」の関係にあり、J-REITでいう投資口価格とNAVの関係と同じ構図で読むことができる。
2つの数字の関係を実在銘柄の実数で図にすると、違いがはっきりする。
当サイトが収録するODX公表値(2026年7月時点)では、上場7銘柄すべてで基準価格がNAVを下回り、乖離は▼5%から▼33%に及ぶ。理屈のうえでNAVより3割安く不動産持分が買える計算になるが、これをただの「割安」と読むのは早計だ。乖離には、二次流通の参加者・流動性がまだ薄いこと、売りたい投資家が価格を譲歩せざるを得ない板の薄さ、NAVの鑑定が半年前の基準時点であること、そして償還までの残存期間や分配利回りへの評価——といった複数の要因が折り重なっている。
見方を変えれば、この乖離の推移こそがST二次流通市場の成熟度を測る定点観測の指標になる。市場参加者が増え、値付けの頻度が上がれば、乖離は理屈の説明がつく水準に収斂していくはずだ。当サイトはトップページのマーケットボードで全上場銘柄の基準価格・NAV・対NAV乖離を基準日つきで記録しており、この収斂(あるいは拡大)を時系列で追跡していく。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。