2026-07-17 / 読了 6分
日本のST市場は、案件より先に制度が整った珍しい市場だ。改正金商法の成立(2019年5月)から施行(2020年5月)、そして国内初のSTOまで——市場が生まれる前夜の2年間を記録する。本稿は2026年7月に、当サイトの収録データ(一次資料由来)と公表資料をもとに回顧として執筆した記録である。
2019年5月31日、改正金融商品取引法が成立した。ブロックチェーン上で移転する権利を「電子記録移転権利」として第一項有価証券並みの規制に取り込む、世界的にも早い立法対応である。施行を待たずに業界も動き、同年10月1日にはSBI・野村・大和・楽天・マネックス・auカブコムの証券6社が自主規制団体「日本STO協会」を設立。法制と自主規制が市場より先に整うという、日本らしい丁寧な立ち上がりだった。
同時期に基盤側too準備が進む。野村グループのBOOSTRYがブロックチェーン「ibet」を、三菱UFJ信託銀行が「Progmat」構想を推進し、のちの二大プラットフォームの原型がこの時期に出揃っている。
2020年5月1日に改正金商法が施行され、STOは正式に法制度の内側に入った。最初に動いたのは私募で、同年10月にSBI e-Sportsが第三者割当による株式STOで5,000万円を調達——規模は小さいが、これが国内STO第1号である。
不動産分野でも、三井物産デジタル・アセットマネジメント(2020年4月設立)をはじめ組成体制の整備が進み、翌2021年の「公募元年」への助走が始まっていた。
後から振り返ると、この期間の意味は「投資家保護の枠組みを先に固めたこと」に尽きる。米国のようにグレーゾーンで市場が先行爆発する道ではなく、開示・業規制・自主規制を整えてから案件を走らせる道を選んだ。その結果、日本のSTは詐欺的ICOの残骸と切り離された「資本市場の商品」として出発できた。市場全体の流れは当サイトのST全史(年表)で、以降の各年は本回顧シリーズで追跡する。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。