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公募ST累計(2025年度末)3,333億円▲1,650ST市場残高(推計)1兆531億円▲81%START時価総額(2026-03)336億円収録銘柄79収録発行額(判明分)3,539億円募集中5START上場7銘柄
▲赤=増加/出所: 業界公表値・当サイト集計
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STARTの1年目を実数で振り返る——2銘柄で開き、6銘柄・年間2,761口で終えた市場

公開 2026-08-27 / 読了 12

日本初のセキュリティトークン二次流通市場「START」は、2023年12月25日に2銘柄で開業した。その最初の1年に何が起きたのかを、ODXが公表する月報13か月分の実数で数え直す。年間の売買は2,761口・2億7,652万4,901円、1年間ずっと約定しなかった銘柄が1つ、そして市場自身が9か月で発注ルールを直した記録が残っている。本稿は2026年8月27日に、回顧として執筆した。

本稿は回顧である——2026年8月に、1年目の記録を数え直した

本稿は、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(以下ODX)が運営するセキュリティトークン(以下ST)の二次流通市場「START」の開業1年目——2023年12月25日から2024年12月末まで——を対象にした回顧である。1周年当日の2024年12月25日に書かれたものではなく、2026年8月27日に、当時から今日までに公表された資料をすべて手元に置いた状態で執筆した。当サイトは記録機関として日付を偽装しないため、この点を最初に明記する。

回顧としてこの時期を選ぶ理由は2つある。ひとつは、STARTに上場している銘柄が2026年8月27日時点で7つしかなく、そのうち6つが1年目のうちに取扱いを開始しているため、1年目の記録がそのまま現在の市場の骨格になっていること。もうひとつは、ODXが毎月公表する月報(Excel)が2023年12月分から欠けることなく残っており、開業当初の実数を後から検証できる状態にあることである。

本稿で扱うのは市場の実数と制度の変更であって、個別銘柄の評価ではない。当サイトは特定銘柄の推奨・勧誘を行わず、値動きの原因も推定しない。まず、読み進めるうえで前提になる4つの言葉と、本稿の数字の作り方を整理しておく。

① PTS(私設取引システム)取引所ではない売買の場
証券会社が金融商品取引法の認可を受けて運営する、証券取引所以外の売買の場をPTS(私設取引システム)という。STARTは大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX)が運営するST専用のPTSで、2023年11月16日に変更登録・変更認可を取得し、市場名を「START」と決めたことを公表している。「上場」という言い方をするが、東京証券取引所への上場とは制度が違う——ODXは各銘柄の売買を始める日を「取扱い開始日」と呼び、本稿もこの語を使う。
② 二次流通市場すでに発行された証券を投資家同士で売買する場
募集で新しく発行される場が発行市場、発行済みのものを投資家が売り買いする場が二次流通市場である。不動産STは2021年8月の第1号から2年4か月にわたって発行市場しかなく、買った人が途中で売る手立ては取扱証券会社を通じた相対の取引に限られていた。STARTはその二次流通市場として2023年12月25日に開いた。
③ 基準価格STARTでの売買に使う値段
STARTの売買の基礎になる値段が基準価格である。終値と同じではなく、約定がなかった日でも注文の状況から翌営業日の基準価格が決まる(別稿『STARTの「基準価格」とは——決まり方、NAVとの違い、乖離の読み方』)。本稿でも、1口も約定していないのに基準価格だけが動いた実例が何度も出てくる。
④ 本稿の数字の出どころODXの月報と、そこからの割り算
本稿の売買実績(出来高・売買代金・営業日数・月末時価総額・月間の始値高値安値終値)は、すべてODXが毎月公表する月報(Excel)の実数である。月末の基準価格だけは当サイトの算出値で、月末時価総額÷ODX公表の発行済数量で求めた。この算出方法は、2026年4月以降の1A0J(月末時価総額46億9,144万9,760円÷47,084口=99,640円)がODX公表の基準価格99,640円と一致することで検算している。
図: 1年目の記録を読む前に押さえる4つの言葉。①が市場の法的な性格、②がSTARTが埋めた空白、③が本稿で最も注意して読む数字、④が本稿の数字の作り方である。出所はODX「セキュリティトークン取引に係る私設取引システムの開設に関する変更登録、変更認可の取得および当該取引市場名決定のお知らせ」(2023年11月16日)、同「新規取扱銘柄」、同「月報」(2026年8月27日取得)、同「銘柄一覧」(2026年8月27日確認)。本図は用語と算出方法の説明であり、特定銘柄の推奨・勧誘ではない。

2023年12月25日——2銘柄で開いた市場と、開業月に1口も約定しなかった銘柄

ODXは2023年12月25日、STARTでの売買取引を開始した。同日付のプレスリリースはODX・SBI証券・大和証券・SMBC日興証券・野村證券の連名で、取扱銘柄として「ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町(デジタル名義書換方式)」(STARTコード1A0A)と「いちご・レジデンス・トークン-芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩-(デジタル名義書換方式)」(同1A0C)の2銘柄を挙げている。取引参加者はSBI証券と大和証券の2社で、SMBC日興証券には「2024年中」、野村證券には「2024年春」という注記付きで「取引参加予定者」と記されていた。サポーター(ブロックチェーン基盤の運営者)はBOOSTRYと三菱UFJ信託銀行の2社である。

12月27日にODXが公表した開業セレモニーの記録によれば、セレモニーは12月25日に大阪市内で開かれ、吉村大阪府知事らが列席し、ODX会長の北尾吉孝氏から、いちご株式会社とケネディクス株式会社の代表者に記念品が贈られた。ODXは同リリースで、STARTのマッチングシステムがAWSのクラウドサービスを用いており、将来的にはSTの発行基盤であるブロックチェーンと連携したストレート・スルー・プロセッシング(STP)を見据える設計だと説明している。

開業から年末までの営業日は5日である。この5日間の実数は明快で、かつ意外だった。1A0Cは初日の12月25日に100,550円で寄り付き、29日に102,500円で引け、5日間で41口・417万5,320円が売買された。一方の1A0Aは、この5営業日で1口も約定していない。ODX月報の1A0Aの行には、始値・高値・安値・終値のすべてに「-」が並び、月間出来高は0口と記録されている。1A0Aが初めて約定したのは、開業から3週間以上たった2024年1月17日、1口・106,505円である。

開業と1年目の主な出来事を時系列で並べると、市場の立ち上がりが「銘柄」と「参加者」と「制度」の3つの線で進んだことが見える。特に参加者の線は追いかける価値がある——開業のプレスに名前が出た証券会社4社のうち、1年目のうちにODXが取引参加資格の承認を公表したのは、2024年8月22日の東海東京証券1社だけだった。

日付
区分
出来事
2023年11月16日
制度
ST取引に係るPTSの開設について変更登録・変更認可を取得し、市場名を「START」と決めたことを公表
2023年11月20日
参加者
SBI証券・大和証券に取引参加資格(スタンダードA)、BOOSTRY・三菱UFJ信託銀行にサポーター資格を承認。同日、第1号銘柄の概要と売買開始予定日も公表
2023年12月25日
開業
売買取引を開始。取扱いは2銘柄(1A0A・1A0C)。プレスは取引参加者としてSBI証券・大和証券に加え、SMBC日興証券(2024年中)・野村證券(2024年春)を「取引参加予定者」と記載
2023年12月27日
開業
大阪市内で開業セレモニー。吉村大阪府知事らが列席
2024年3月11日
インフラ
リフィニティブ社によるリアルタイム相場情報等の提供開始
2024年3月25日
制度
第1回START運営委員会の資料・議事要旨を公表
2024年4月16日
インフラ
CoinDesk JAPANでのヒストリカルデータ等の掲載開始
2024年5月10日
制度
「ST-Nominatorの審査体制の確認について」を掲載
2024年5月24日
銘柄
3銘柄目・1A0D(いちごRT西麻布・代々木他5件)の取扱い開始
2024年6月27日
制度
START運営委員会における社債STの取扱いに関する検討結果を公表
2024年8月22日
参加者
東海東京証券に取引参加資格(スタンダードA)を承認。1年目に公表された参加資格の新規承認はこの1件だけ
2024年9月6日
銘柄・制度
4銘柄目・1A0F(KDXST名古屋栄ビル)の取扱い開始。同日、呼値の単位と制限値幅を10月7日から変更すると予告
2024年9月18日
銘柄
5銘柄目・1A0G(トーセイST3市ヶ谷)の取扱い開始
2024年10月7日
制度
不動産投資受益証券の呼値の単位・制限値幅の新テーブルを適用
2024年10月25日
銘柄
6銘柄目・1A0H(いちごRT仲之町・小日向他5件)の取扱い開始
2024年11月27日
銘柄
KDXSTドーミーイン神戸元町・KDXST名古屋栄ビルの資産運用会社の変更を公表
2024年12月24日
制度
「権利確定に伴う売買停止期間等 一覧」を公表。各銘柄の権利確定ごとに5〜6営業日の売買停止(移転禁止)が予定されていた
2024年12月25日
節目
開業1周年。ODX社長名の挨拶は「開業当初は2銘柄の取扱銘柄でしたが、現在では6銘柄へと拡大し、売買代金も徐々に増えてきています」と記す
表: STARTの開業前後から開業1周年までの出来事。左から順に、日付/区分/出来事と読む。まず「参加者」の行を縦に追ってほしい——開業時に名前が出た4社のうち、1年目のうちにODXが参加資格の承認を公表したのは東海東京証券1社だけである(2026年8月27日時点の取引参加者一覧には、証券会社6社とサポーター2社が載っている)。次に「銘柄」の行を追うと、2銘柄から6銘柄への増加が2024年5月と9〜10月に集中していることが読める。出所はODXお知らせの各記事(2023年11月16日・11月20日・12月25日・12月27日、2024年3月11日・3月25日・4月16日・5月10日・6月27日・8月22日・9月6日・10月4日・11月27日・12月24日・12月25日。いずれも2026年8月27日確認)、ODX「新規取扱銘柄」、同「取引参加者一覧」(2026年8月27日確認)。本表は記録であり、特定銘柄・特定事業者の推奨・勧誘ではない。

2から6へ——「上場」は発行の翌日とは限らない

1年目のあいだに取扱い銘柄は2から6へ増えた。順に、2024年5月24日に1A0D(いちご・レジデンス・トークン-西麻布・代々木ほか-)、9月6日に1A0F(ケネディクス・リアルティ・トークン KDX名古屋栄ビル)、9月18日に1A0G(トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ3)市ヶ谷)、10月25日に1A0H(いちご・レジデンス・トークン-市谷仲之町ほか-)である。ODXの「新規取扱銘柄」ページは各銘柄の取扱い開始日を掲載しており、2026年8月27日時点でも当時の日付をそのまま確認できる。

ここで、当サイトが収録する発行日(信託設定日)と突き合わせると、実務上きわめて重要な事実が出てくる。発行から売買開始までの距離が、銘柄ごとにまったく違うのである。1A0Dは発行の翌日、1A0Hも翌日に売買が始まったのに対し、1A0Fは発行から172日、1A0Gは117日を要している。1A0Fは2024年3月18日に発行が完了していながら、STARTで買えるようになったのは半年近くたった9月6日だった。

この差は、開業時の2銘柄が例外的に速かったという話でもない。1A0A・1A0Cはいずれも2023年12月22日発行・12月25日取扱い開始で、間隔は3日である。つまり1年目に上場した6銘柄だけを見ても、発行から売買開始までは1日から172日まで開いていた。参考として、7銘柄目となる1A0J(三井物産グループのデジタル証券〜三重・イオンタウン鈴鹿〜)は2024年11月28日に発行されながら、取扱い開始は372日後の2025年12月5日である。

募集の段階で「STARTで売買できる予定」と書かれていても、いつからかは銘柄ごとに違い、しかも取扱業者が定めるもので変更されうる(別稿『目論見書のどこを読むか——買う前に確かめる7項目と、手数料欄に書かれていない4.0%』)。既発行の銘柄を後から上場させることの難しさについては、ODXの運営委員会が実際に検討して「壁が高い」と結論づけた資料を別稿『なぜ「後からSTARTに上場」できないのか——既発行銘柄を阻む5つの壁(ODX運営委員会資料を読む)』で読み解いた。

6銘柄が1年目にたどった実数を、1枚の表にまとめる。

銘柄(STARTコード)
発行日 → 取扱い開始日(間隔)
1年目の営業日
出来高(口)
売買代金(円)
2024年12月末の基準価格(円)
1A0A KDXSTドーミーイン神戸元町
2023/12/22 → 2023/12/25(3日)
250
737
72,797,220
97,010
1A0C いちごRT芝公園・東新宿他4件
2023/12/22 → 2023/12/25(3日)
250
939
94,388,094
100,030
1A0D いちごRT西麻布・代々木他5件
2024/05/23 → 2024/05/24(1日)
151
916
92,955,657
103,500
1A0F KDXST名古屋栄ビル
2024/03/18 → 2024/09/06(172日)
78
120
11,464,340
96,280
1A0G トーセイST3市ヶ谷
2024/05/24 → 2024/09/18(117日)
71
0
0
101,490
1A0H いちごRT仲之町・小日向他5件
2024/10/24 → 2024/10/25(1日)
46
49
4,919,590
100,500
(参考)1A0J 三井物産G三重イオンタウン鈴鹿
2024/11/28 → 2025/12/05(372日)
未上場
この表のいちばんの発見は2列目である発行してから売買が始まるまでの距離は、1日から372日まで開いている。1A0D・1A0Hは発行の翌日、1A0A・1A0Cは3日後に売買が始まったのに対し、1A0F(KDXST名古屋栄ビル)は発行から172日、1A0G(トーセイST3市ヶ谷)は117日かかっている。参考に置いた1A0Jに至っては、2024年11月28日に発行されながら取扱い開始は372日後の2025年12月5日だった。「発行された不動産STは、いずれSTARTで売れるようになる」とは限らないし、なるとしても時期が読めない——この点は、既発行銘柄を後から上場させる難しさを扱った別稿『なぜ「後からSTARTに上場」できないのか』と合わせて読まれたい。
表: STARTに上場した銘柄が開業1年目(2023年12月25日から2024年12月末まで)にたどった実数。左から順に、銘柄/発行日から取扱い開始日までの距離/その期間の営業日数/出来高/売買代金/2024年12月末の基準価格と読む。営業日数・出来高・売買代金・月末時価総額はODX月報(月間相場表〈不動産ST〉)13か月分の実数を当サイトが銘柄ごとに合計したもの。基準価格は当サイトの算出値(2024年12月末の月末時価総額÷ODX公表の発行済数量)で、ODXが公表した値そのものではない。発行日は当サイト収録の銘柄データベース(各銘柄の発行体プレスリリース・EDINET提出書類で確認済み)、取扱い開始日と発行済数量はODX「新規取扱銘柄」(2026年8月27日確認)。本表は取引実績の記録であり、値動きの原因を推定するものでも、特定銘柄の推奨・勧誘でもない。

1年目の実数——2,761口・2億7,652万4,901円、回転率1.48%

ODXの月報13か月分を合計すると、開業から2024年12月末までの売買は2,761口・2億7,652万4,901円だった。この期間の営業日は250日なので、市場全体の1日あたりの売買代金は平均で約110万6,100円になる(当サイトの計算)。銘柄ごとの営業日を積み上げると846の「銘柄・営業日」があり、1銘柄・1営業日あたりでは平均3.3口・約32万7,000円という水準である。

この2億7,652万円という数字は、2024年12月末の時価総額187億1,870万8,100円の1.48%にあたる。上場株式市場の回転率と比べるまでもなく、極端に低い。ODXの社長は1周年の挨拶(2024年12月25日)で「開業当初は2銘柄の取扱銘柄でしたが、現在では6銘柄へと拡大し、売買代金も徐々に増えてきています」と述べているが、月次で並べると「徐々に増える」という滑らかな線ではないことが分かる。月間の売買代金は最少302万1,955円(2024年3月)から最多5,588万590円(2024年10月)まで、18倍以上の幅でぶれている。

時価総額のほうは、開業月の67億980万円から2024年12月末の187億1,870万8,100円へと2.8倍になった。ただし、この増加のほとんどは値上がりではなく銘柄の追加による。2024年5月に1A0D、9月に1A0Fと1A0Gが加わり、10月に1A0Hが加わった月に、時価総額が階段状に跳ねている。市場規模の話をするときに、銘柄数の増加と1銘柄あたりの価格変動と売買の増加を分けて読むべき理由が、この表にそのまま出ている。

なお、1年目の売買日数は制度上さらに削られていた。当時のSTARTは、各銘柄の分配金の権利確定にあたって売買停止期間(移転禁止期間)を設けていたためである。1年目の終わりにあたる2024年12月24日にODXが公表した「権利確定に伴う売買停止期間等 一覧」を見ると、各銘柄の権利確定ごとに5〜6営業日の売買停止が予定されている。分配が年2回であれば、1銘柄あたり年10〜12営業日は売買できなかった計算になる。売買停止の仕組み全般は別稿『STARTの売買はいつ・なぜ止まるのか——売買停止の6事由と、再開までの「15分」』で扱った。

月末銘柄数
営業日数
出来高(口)
売買代金(円)
月末時価総額(円)
2023年12月
2
5
41
4,175,320
6,709,800,000
2024年1月
2
19
94
9,487,475
6,879,648,000
2024年2月
2
19
110
10,942,323
6,680,309,200
2024年3月
2
20
30
3,021,955
6,687,790,400
2024年4月
2
21
222
22,423,500
6,787,772,000
2024年5月
3
21
165
16,753,540
10,114,601,300
2024年6月
3
20
227
22,641,335
9,999,244,000
2024年7月
3
22
107
10,733,640
10,136,314,375
2024年8月
3
21
542
52,983,587
9,902,011,200
2024年9月
5
19
341
33,943,586
14,884,671,900
2024年10月
6
22
543
55,880,590
18,771,912,200
2024年11月
6
20
214
21,136,420
18,802,293,710
2024年12月
6
21
125
12,401,630
18,718,708,100
合計・年末値
6
250
2,761
276,524,901
18,718,708,100
1年目の合計は2,761口・2億7,652万4,901円だった。これを2024年12月末の時価総額187億1,870万8,100円で割ると1.48%である(当サイトの計算)。時価総額は2.8倍になったが、それは売買が増えたからではなく、銘柄が2つから6つに増えたからである——2024年5月に1A0D、9月に1A0Fと1A0G、10月に1A0Hが加わった月に、時価総額が階段状に跳ねているのが読める。月ごとの売買代金は最少302万円(2024年3月)から最多5,588万円(2024年10月)まで18倍以上ぶれており、「徐々に増える」という滑らかな線にはなっていない
表: 開業1年目の月次推移。左から順に、月/その月末に取り扱っていた銘柄数/営業日数/7銘柄合計の出来高/売買代金/月末時価総額と読む。最終行の「250」は2023年12月25日から2024年12月末までの営業日の合計で、この期間の市場全体の実働日数にあたる。数値はすべてODX月報(月報〈市場統計〉および月間相場表〈不動産ST〉)13か月分の実数(2026年8月27日取得)。合計と回転率1.48%は当サイトが計算したもので、ODXの公表値ではない本表は市場実績の記録であり、特定銘柄の推奨・勧誘ではない。

約定しない日の記録——1A0Gは上場から71営業日、1口も売れなかった

1年目の記録でいちばん重い事実は、売買代金の少なさそのものよりも、「まったく約定しない期間」が構造的に生じていたことである。銘柄ごとの月次で数えると、1年目の45の「銘柄・月」のうち6つが出来高ゼロだった(当サイトの集計)。

最も長かったのが1A0G(トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ3)市ヶ谷)である。2024年9月18日に取扱いが始まってから2024年12月末までの71営業日、1口も約定していない。年をまたいで2025年1月末まで数えると90営業日連続でゼロ、初めて約定したのは2025年2月7日の99,600円だった。1年目に上場していた6銘柄のうち、年間出来高がゼロだったのはこの1銘柄である。

同じ現象は他の銘柄でも起きていた。1A0Aは開業月の5営業日がゼロ、1A0Fは取扱い開始から2024年9月末までの15営業日がゼロで、初約定は10月16日の96,450円——発行価格100,000円を3.55%下回る水準からの出発だった。

そして、この期間も基準価格は動いている。1A0Gの月末基準価格(当サイト算出)は、出来高0口のまま2024年9月末の103,835円から10月末102,490円、11月末102,490円、12月末101,490円と推移した。STARTの基準価格は約定がなくても注文の状況から決まるためで、その仕組みは別稿『STARTの「基準価格」とは——決まり方、NAVとの違い、乖離の読み方』で扱った。値段が動いていることは、そこで売れることの証拠にはならない。

① 開業した銘柄が、開業月に0口1A0A(KDXSTドーミーイン神戸元町)
開業日から2023年12月末までの5営業日、1口も約定しなかった。同じ日に始まった1A0Cが41口・417万5,320円を売買したのとは対照的である。初約定は2024年1月17日の1口・106,505円で、この月の1A0Aの売買代金は106,505円(月間の1日平均5,605円)だった。
② 上場したのに、その月はゼロ1A0F(KDXST名古屋栄ビル)
2024年9月6日に取扱いが始まったが、9月の15営業日は0口初約定は2024年10月16日の96,450円で、発行価格100,000円を3.55%下回る水準からの出発だった。
③ 1年目を通して一度も約定しなかった銘柄1A0G(トーセイST3市ヶ谷)
2024年9月18日の取扱い開始から2024年12月末までの71営業日、1口も約定していない2025年1月末まで数えると90営業日連続でゼロで、初めて約定したのは2025年2月7日の99,600円だった。1年目の6銘柄のうち、年間の出来高がゼロだったのはこの1銘柄である
④ 約定がなくても基準価格は動いた1A0G・1A0A
1A0Gの月末基準価格(当サイト算出)は、出来高0口のまま2024年9月末103,835円→10月末102,490円→11月末102,490円→12月末101,490円と動いている。1A0Aも、開業月は約定がないまま100,000円で据え置かれた。「値段がついている=売れる」ではない——基準価格の決まり方は別稿『STARTの「基準価格」とは』で扱った。
図: 開業1年目に記録された「約定ゼロ」の4つの姿。①が開業初日組、②が新規上場直後、③が1年間ずっと、④が値段だけが動く現象である。銘柄ごとの月次で数えると、1年目の45の「銘柄・月」のうち6つが出来高ゼロだった(当サイトの集計)。出所はODX月報(月間相場表〈不動産ST〉)2023年12月分から2024年12月分まで、および2025年1月分・2月分(2026年8月27日取得)、ODX「新規取扱銘柄」。百分率・合計・月末基準価格は当サイトが計算したものでODXの公表値ではない。当サイトは値動きの原因を推定しない。本図は取引実績の記録であり、特定銘柄の推奨・勧誘ではない。

市場が自分で認めた課題——2024年10月7日、呼値と制限値幅が入れ替わった

1年目に起きた制度変更のうち、最も直接的に売買のしやすさに触れたのが、2024年10月7日に適用された呼値の単位・制限値幅の改定である。ODXは2024年9月6日付のお知らせでこの変更を予告し、その理由を自ら次のように説明した。STARTで取り扱う不動産投資受益証券はいずれも1口100,000円を発行価格として発行され、取扱い開始後の取引価格は「100,000円を挟み概ね上下5%程度の範囲で推移」している。ところが当時の呼値の単位は、桁数が変わる100,000円を境に1円から5円へ切り替わる設定だった。「100,000円を境に呼値の単位が切り替わることは、発注において煩雑であり、取引の活性化に少なからず影響を及ぼしていると想定されます」——市場の運営者が、開業から9か月で自らの設計上の不具合を認めた一文である。

改定後は、50,000円超300,000円以下の価格帯の呼値の単位が一律10円になり、100,000円をまたいでも刻みが変わらなくなった。同時に制限値幅も組み替えられ、基準価格が100,000円以下の銘柄の1日の値幅は、上下5,000円から上下15,000円へと3倍に広がっている。100,000円超300,000円以下の帯(従来から上下15,000円)と揃えたかたちである。

板が薄い市場で値幅制限を広げれば、少ない約定で大きく動く余地も同時に広がる。1年目に付いた最も高い値段は2024年10月28日の1A0Dの116,990円で、発行価格を16.99%上回る水準だった。ただしこの時点の1A0Dの基準価格は100,000円を超えていたため、改定前の表でも制限値幅は同じ上下15,000円である。当サイトはこの高値が改定の結果だとは述べない。事実として記録するのは、1年目のうちに発注ルールそのものが入れ替わったこと、そしてその理由が「取引の活性化」だったことである。

項目
2024年10月6日まで
2024年10月7日から
呼値の単位(10万円前後)
100,000円以下は1円、100,000円超は5円。発行価格ちょうどの100,000円を境に単位が切り替わった
50,000円超300,000円以下は一律10円。100,000円をまたいでも単位が変わらない
呼値の単位(その他の価格帯)
1,000,000円超は10円
30,000円以下1円/30,000円超50,000円以下5円/300,000円超500,000円以下50円/500,000円超100円
制限値幅(基準価格100,000円以下)
基準価格の上下5,000円
基準価格の上下15,000円
制限値幅(100,000円超300,000円以下)
基準価格の上下15,000円
基準価格の上下15,000円(変更なし)
ODXが挙げた理由
——
「100,000円を境に呼値の単位が切り替わることは、発注において煩雑であり、取引の活性化に少なからず影響を及ぼしていると想定されます」
この改定の意味は2つある。ひとつは「発行価格100,000円ちょうどが、呼値の段差の真上にあった」という設計上の不具合を、開業から9か月で市場自身が認めて直したこと。もうひとつは1日に動ける幅が3倍になったこと——基準価格が100,000円以下の銘柄では、制限値幅が±5,000円(±5%相当)から±15,000円(±15%相当)へ広がった板が薄い市場で値幅制限を広げれば、少ない約定で大きく動く余地も同時に広がる。実際、1年目で最も高い値段は2024年10月28日の1A0Dの116,990円(発行価格を16.99%上回る)で、これは改定の3週間後に付いた値である。ただし1A0Dの基準価格はその時点で100,000円を超えていたため、改定前の表でも制限値幅は同じ±15,000円だった——この高値そのものが改定の結果だとは当サイトは述べない。
表: 2024年10月7日に適用された呼値の単位・制限値幅の新旧比較。左から順に、項目/改定前/改定後と読む。「呼値の単位」とは注文できる値段の刻み幅、「制限値幅」とはその日に基準価格からどこまで離れた値段を付けられるかの上限である。出所はODX「不動産投資受益証券の呼値の単位及び制限値幅の変更について」(2024年9月6日)および「10月7日(月)より、不動産投資受益証券の呼値の単位及び制限値幅が変わります」(2024年10月4日)に掲載された新旧の表、ならびに同お知らせが改定を告げる「セキュリティトークン取引に係る業務規程施行規則」別表-1・別表-2(いずれも2026年8月27日確認)。1A0Dの高値はODX月報(月間相場表〈不動産ST〉2024年10月分)。括弧内の百分率は発行価格100,000円を基準に当サイトが換算したもの。本表は制度変更の記録であり、特定銘柄の推奨・勧誘ではない。

1年目のあとに起きたこと——7銘柄目は発行の372日後、そして今も0口

1周年の時点で6銘柄だったSTARTに、7銘柄目が加わったのは2025年12月5日である。三井物産グループのデジタル証券〜三重・イオンタウン鈴鹿〜(1A0J)で、発行日2024年11月28日から372日後だった。開業2周年にあたる2025年12月25日のODX社長の挨拶は「税制改正への対応など制度面の過渡期ということもあり、発行市場においては踊り場となる局面も見られました」と述べ、取扱いが7銘柄になったことを報告している。

制度の面では、2026年4月1日以降に計算期末日が到来する銘柄から、1年目の市場を特徴づけていた「権利確定に伴う売買停止期間」が廃止された。代わりに、権利落日の基準価格から1口当たり予想分配金(利益配当金額と元本払戻し額の合計)相当分を減じる方式へ移行し、分配金の支払日も権利確定日と同日ではなくなっている。分配の受け取り時期がどう動いたかは別稿『分配金はいつ・どう入るか——権利確定日は決算日、支払日は2026年に「2か月後」へ動いた』で扱った。

その1A0Jが、2026年7月末までの159営業日にわたって1口も約定していない。2026年8月27日時点のODX公表値によれば、この銘柄の保有者は1,903人で、上場7銘柄のなかで最も多い。保有者が最も多い銘柄が、上場から8か月にわたって一度も約定していない——1年目の1A0Gで起きたことが、そのまま繰り返されている。

なお、この間に基準価格だけは動いた。1A0Jの月末基準価格(当サイト算出)は2025年12月末から2026年3月末まで102,260円で据え置かれ、2026年4月末に99,640円へ2,620円下がっている。出来高は4月も0口である。ODXが2026年4月2日に公表したとおり、権利落日の基準価格は予想分配金相当分を減じた価格になる。この99,640円は、2026年8月27日時点でODXが公表している1A0Jの基準価格と一致しており、本稿が月末時価総額を発行済数量で割って基準価格を求める方法の検算になっている。

年ごとの売買実績を並べると、開業から2024年12月末までの13か月が2,761口・2億7,652万4,901円、2025年の1年間が4,584口・4億4,923万2,490円、2026年1月から7月までが2,567口・2億3,637万9,150円である。売買は1年目より増えた。上場銘柄は、1年目の6から7へ1つ増えただけである。

時点
起きたこと
2025年2月7日
1A0G(トーセイST3市ヶ谷)が上場から90営業日目にして初約定。99,600円・22口
2025年12月5日
7銘柄目・1A0J(三井物産G三重イオンタウン鈴鹿)の取扱い開始。発行日2024年11月28日から372日後
2025年12月25日
開業2周年。ODX社長名の挨拶は「税制改正への対応など制度面の過渡期ということもあり、発行市場においては踊り場となる局面も見られました」と記す
2026年4月1日以降
計算期末日が到来する銘柄から「権利確定に伴う売買停止期間」を廃止し、権利落日に予想分配金相当分を基準価格から減じる方式へ移行。分配金の支払日も権利確定日と同日ではなくなった
2026年7月末
取扱いは7銘柄、月末時価総額207億5,200万1,840円。同月の出来高は98口・売買代金814万4,330円
2026年7月末(1A0J)
上場から159営業日にわたって出来高0口。保有者は1,903人(2026年8月27日ODX公表値)と7銘柄で最多である
年ごとの売買実績を並べると次のようになる——開業から2024年12月末までの13か月が2,761口・2億7,652万4,901円、2025年の1年間が4,584口・4億4,923万2,490円、2026年1月から7月までが2,567口・2億3,637万9,150円である(いずれもODX月報からの当サイト集計)。売買は1年目より増えたが、上場銘柄は1年目の6から7へ1つ増えただけである
表: 開業1周年より後に起きたことを、本稿の基準日である2026年8月27日までさかのぼって記録した。左から順に、時点/起きたことと読む。1年目の記録を今日から見返すとき、いちばん効くのは最終行である——最も新しく上場した銘柄が、保有者を最も多く抱えながら159営業日にわたって1口も約定していない。出所はODX月報(月間相場表〈不動産ST〉2025年1月分から2026年7月分まで)、ODX「新規取扱銘柄」、同「お陰様で『START』は開業2周年を迎えました」(2025年12月25日)、同「令和7年度税制改正に伴う不動産STの売買取引等の一部取扱い変更について」(2026年4月2日)、同「銘柄一覧・銘柄詳細」(2026年8月27日確認)。合計は当サイトが計算したもの。当サイトは値動きの原因を推定しない。本表は記録であり、特定銘柄の推奨・勧誘ではない。

1年目の記録から持ち帰るもの

STARTの1年目は、日本の不動産STにとって「買った人が売れる場」が初めて存在した1年だった。その意味は小さくない。それまで2年4か月のあいだ、不動産STには発行市場しかなかったからである。同時に、この1年の実数は、二次流通市場が存在することと、そこで実際に売れることのあいだにある距離も記録している。

実務者にとっての含意は、組成の段階に返ってくる。1年目に上場した6銘柄でさえ、発行から売買開始まで1日から172日まで開き、上場後も1銘柄は71営業日にわたって買い手が現れなかった。出口をSTARTに置く設計であれば、いつから売買が始まるのか、そこにどれだけの取扱証券会社が付くのか、板の厚みを何で担保するのかを、募集前に決め切っておく必要がある。後から上場させる道が事実上ふさがっていることは、別稿で読み解いたODX運営委員会の資料が示すとおりである。

投資家にとっての含意は、もっと単純である。銘柄一覧に載っていることと、売りたいときに売れることは別だということ。そして値段が毎日動いていることも、売れることの証拠にはならないということ。1年目の記録が示す確認手順を、最後に5項目にまとめる。

本稿は当サイトが公表資料から検証した記録であり、投資助言ではない。特定銘柄の推奨・勧誘を行うものでもない。本文中の合計・平均・回転率・月末基準価格は、ODXが公表した実数をもとに当サイトが計算したものであり、ODXの公表値ではない。当サイトは値動きの原因を推定しない。

① 「上場している」と「売れる」を分けて読む出来高と営業日数を見る
1A0Gは上場から71営業日、1口も約定しないまま1年目を終えた。銘柄一覧に載っていることは、売りたいときに買い手がいることを意味しない。ODX月報の「月間出来高」欄が0の月がどれだけあるかを、銘柄ごとに数えるのが最も速い
② 値段が動いていることを流動性の証拠にしない基準価格と出来高を並べて見る
1A0Gの基準価格は出来高0口の3か月で103,835円から101,490円まで動いた。基準価格は約定がなくても決まる(別稿『STARTの「基準価格」とは』)。チャートの動きと約定の有無は別の話である
③ 発行日と取扱い開始日の距離を確かめる募集資料の「売却できる時期」欄
1年目の6銘柄でも1日から172日まで開いており、参考に挙げた1A0Jは372日だった。募集時に「STARTで売買できる予定」と書かれていても、いつからかは銘柄ごとに違い、取扱業者が定めて変更されうる(別稿『目論見書のどこを読むか』)。
④ 制度は動く前提で読む規程・施行規則の改定履歴
1年目のうちに呼値の単位と制限値幅が入れ替わり、2周年の後には権利確定に伴う売買停止期間が廃止され、分配金の支払日も動いた「開業時のルール」で書かれた解説は、そのままでは古くなる
⑤ 市場規模の増減の理由を分けて読む銘柄数と1銘柄あたりを分ける
1年目に時価総額は約67億円から約187億円へ2.8倍になったが、これは銘柄が2つから6つに増えたことによる「市場が拡大した」という表現の中身が、銘柄の追加なのか、1銘柄あたりの値上がりなのか、売買の増加なのかを分けて確かめたい
図: STARTの1年目の記録から、今日の判断に持ち帰れる5項目。①②が流動性の読み方、③が売れるようになる時期、④が制度の可変性、⑤が市場規模の読み方である。出所は本稿で用いたODX月報(2023年12月分から2026年7月分まで)、ODX「新規取扱銘柄」「取引参加者一覧」「銘柄一覧」、および本文に挙げた各お知らせ(いずれも2026年8月27日確認)。本図は確認手順の整理であり、投資助言でも、特定銘柄の推奨・勧誘でもない。
SOURCES / 出所

本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

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