2026-07-27 / 読了 7分
毎月の不動産ST市場の動きを、募集・発行・制度の3つの視点で記録する月次サマリー。第1号は、募集中3件の顔ぶれと、利益超過分配の新税制が実務に降りてきた最初の夏を整理する。
7月中旬時点で当サイトに収録している公募の募集中案件は3件。最大は大和ハウス不動産投資顧問の「大和ハウスLogiトークン-門真・富里-(デジタル名義書換方式)」で、発行総額約77.3億円・7月30日発行予定。大和ハウスグループとして初の不動産STであり、物流施設2物件(大阪府門真市・千葉県富里市)を裏付けとする。取扱はSMBC日興証券・東海東京証券・十六TT証券の3社で、ibet for Fin基盤・受益証券発行信託スキームだ。
ほかに三井物産デジタル・アセットマネジメントの名古屋・大規模レジデンス(ソーラスフロント富船・295戸、ALTERNA自己募集)、デジタル証券株式会社の「renga第3号 静鉄ホテルプレジオ京都烏丸御池」(自己募集・約8.9億円)が募集中。自己募集(証券会社を介さない直接募集)の存在感が増しているのが今年の特徴で、販売チャネルの多様化が進んでいる。
三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)は7月27日、「三井物産グループのデジタル証券〜品川・オフィス&ホテル〜(譲渡制限付)」を公開し募集を開始したと発表した。投資対象は東京都品川区東品川四丁目の複合ビル「品川シーサイドイーストタワー」(2004年8月建築・地下1階付23階建・延床43,014.06㎡)で、鑑定評価額は424億円(価格時点2026年6月30日・日本不動産研究所)。MDMの案件としては過去最大の鑑定評価額(従来最大は名古屋プライムセントラルタワーの約298億円)で、当サイト収録全体でも汐留シティセンター(1,147億円)、大阪堂島浜タワー(583億円)に次ぐ3番目の規模となる。
受託者のオルタナ信託が7月24日に提出した有価証券届出書(EDINET書類番号S100YS50)によると、発行数は1,740,000口、発行価格は1口10,000円(発行価額は9,600円・差額400円は引受人の手取金)、発行価額の総額は167.04億円。引受人は大和証券1,340,000口とMDM 400,000口で、申込期間は大和証券が8月20日〜27日、MDMが8月21日〜27日、払込期日(信託設定日)は8月31日。借入予定はレンダー三井住友信託銀行で252.9億円(別に消費税ローン6.19億円)、LTVは59.6%と記載されている。
物件はオフィスとホテルの複合で、オフィス階層のテナントは上場企業およびそのグループ会社のみ(2026年5月末時点)、ホテル階層はソラーレホテルズアンドリゾーツが運営する「ロワジールホテル 品川シーサイド」(300室)で、ホテル運営利益(GOP)に連動する完全変動賃料の定期建物賃貸借契約が締結されている。予想分配金利回りは年4.0%(税引前・年率換算、第一期・第二期平均、元本払戻し=利益超過分配を含む)とプレスリリースに記載。信託計算期日は毎年2月末日・8月末日(初回2027年2月末日)、分配金支払日は計算期日の属する月の翌々月応当日で、当サイトは分配公表を計算期日到来後に追跡する。
2026年4月1日に適用が始まった利益超過分配の新税制(元本の払戻し扱い)は、この夏から各銘柄の計算期日到来とともに実務フェーズに入る。野村證券は3月に対象5銘柄(湯けむりの宿・雪の花、月島タワー、那須・アウトレット、京都三条ホテル、Kolet-1)の保有者向けに取扱い変更を通知しており、確定申告に必要な「元本減少割合」は各アセットマネージャーのサイトで公表される予定だ。
当サイトはこの公表値を一次資料つきで連続記録する「分配・元本トラッカー」の運用を開始した。一般口座・源泉徴収なし特定口座の保有者は申告実務に直結するため、対象銘柄の保有者は公表スケジュールに注意しておきたい。
ODXが2026年7月22日付で公表した基準価格で、トーセイST3市ヶ谷(STARTコード1A0G)が96,520円となり、前回公表値81,530円から14,990円(+18.4%)上昇した。同銘柄の1口当たり基準価額(直近公表)は101,934円で、基準価格の対基準価額乖離は約-20%から約-5%に縮小した計算になる。
同日時点で、運用会社(トーセイ・アセット・アドバイザーズ)およびODXから、この変動に関連する公表資料は確認できていない。当サイトはODXの公表値をそのまま記録するもので、変動の要因については判断しない。START市場は売買が薄く、少数の約定でも基準価格が大きく動きうる点には留意が必要だ。なお同日、他6銘柄の基準価格の動きはいずれも±20円以内だった。
当サイトの収録は77銘柄(公募67・私募10)となり、うち56銘柄で予想利回り、66銘柄で発行額を一次資料により確認済み。今月は全銘柄への最終更新日の付与、市場統計・ST全史年表・用語集の公開、分配・元本トラッカーの運用開始、EDINETの漏れ候補監査による未収録案件の収録(日本橋富沢町・品川シーサイドイーストタワー)を行った。収録の完全性・正確性への指摘は「データについて」の方針に基づき随時反映する。
本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。